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2017.08.10 仕事術

“議会あるある”から脱却し、話し合いのプロ集団になるために

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早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員/岩手県久慈市議会事務局議事係主査
長内紳悟

 地方議会の現場には「そうそう、それよくある」といった多くの議会共通のいわゆる“議会あるある”が山ほど存在する。地方議会をいまだに機関対立ではなく、与野党対立にある議院内閣制だと勘違いしている議会さえある。筆者は、そんな誤謬(ごびゅう)や「そういうもの、それが普通」といった思い込み等に満ちた“議会あるある”を、議会事務局の立場から問題提起をしながら、議会内に気づきの連鎖を促し、議会改革を後押ししてきたつもりである。本稿では、そういった“議会あるある”の一部を紹介しながら、議会改革をさらに推し進めていくための提言を行いたい。

会して事を議する機関としての議会

 地方公共団体に置かれている議会は、その時々の文脈で地方議会、自治体議会、議事機関、議決機関、立法機関など様々に表現される。
 日本国憲法制定当時に、英語原文のGHQ草案を日本側は、[the diet/the sole law-making authority]を「国会/唯一の法律制定機関」と、[local legislative assembly]は“legislative”をあえて省き、単に「地方議会」と訳した。その後制定された憲法では、英訳和訳の後先は別にして、[the diet/the sole law-making organ]で「国会/唯一の立法機関」、[assembly as deliberative organ]で「議事機関としての議会」と表記されることとなった。
 憲法に立ち返れば、議事機関としての議会ということになる。「事を議する」と書いて議事、「会して議する」と書いて議会、つまり「会して事を議する」機関が議会である。逆にいえば「会せず」、「議せず」では憲法が要請しているものにはならないということになる。
 では、議場に参集しなかったことだけを「会せず」というのだろうか。あるいは、議場に居合わせさえすれば「会した」といえるだろうか。
 ここで、こんな議会あるあるを紹介したい。

常習的に遅刻・早退する/しょっちゅう出たり入ったりする/携帯電話が鳴る/小声で愚痴る/ため息をつく/腕を組む/目をつぶる/頭を横に振る/不機嫌そう/何も発言しない/ヒソヒソ話をする

 読者の議会では、こんなあるあるは存在しないだろうか。仮にこのような状態で、議会は「会した」と住民に胸を張って主張できるだろうか。

 会したならば、次に「議する」わけである。つまり、話し合うのであるが、話し合いにも様々なレベルや段階のものがある。
 議会が話し合うに当たって議事の順序というものが存在する。標準会議規則は、事を議する順番として、①提案者説明→②質疑→③討論→④採決を規定する。実は、場合によっては、その順序を省略できるということを規定するのも同規則である。議事機関が機関たらしめる話し合いを省略するのであるから、滑稽であると筆者には思える。
 ここでまた、別の議会あるあるを紹介したい。

同じ話を繰り返す/人の話を繰り返す/話が長い/決めつける/本論にいかない/本論から脱線する

 このような状態で、議会が「議した」と主張するのであれば、大きな見落としがあったり、主張した根拠に間違いがあったりする可能性があるのではないだろうか(この論拠については、機会があればまたいつか紹介したい)。
 換言すれば、いかに「会する」、「議する」ことに意を配し力点を置いているかが、議会力のバロメーターになるのではないか。なぜなら、議会は議決機関ともいわれるように、「会して」、「議した」上で「決する」のであるから、どれだけ意見統合度、合意形成度を話し合いによって高められるか、それによって高次の団体意思決定を導くことができるかが、議会権限を発揮できたかどうかに当たるからである。

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