2017.04.10 議会事務局
第31回 政務活動費の後払いに事務局は耐えられるか
議会事務局実務研究会 吉田利宏
■お悩み(「後払いの予習」さん 50代 市議会事務局総務課長)
市議会で、一部の議員の政務活動費が問題となり、改革が議論されています。ある有力会派からは、「この際、完全後払いにしたらどうか」という意見が出ています。議会事務局は今でも手一杯で不安です。後払いに切り替えたら、やはり議会事務局にとって大きな負担となるでしょうか。
回答案
A かなりの負担増を覚悟しなくてはならない。議長が適正な支出かどうか判定して政務活動費を交付するわけであるが、それはとりもなおさず、事務局がチェックすることを意味するからだ。
B 政務活動費の性格は補助金である。最終的な支出の責任は市長にある。議会事務局は必要な領収書などをそろえる必要はあるが、チェックを理事者側に任せれば事務局にとって、それほどの負担にならない。
C 事務局の負担はある程度は覚悟しなければならない。ただ、使途基準などを議会で明確にした上で、この基準を満たしているかどうか、会派や議員にチェックしてもらうなどの工夫をすれば、事務局の負担は最小限にすることができる。
お悩みへのアプローチ
京丹後市議会が導入し話題となった政務活動費の後払いが全国的に広がっています。筆者が把握している範囲でも、これまで、導入されていた京丹後市議会、うきは市議会、飛騨市議会、北海道栗山町議会といった議会に加え、昨年末には、珠洲市議会、射水市議会、阪南市議会、福岡県新宮町議会が新たに後払いに条例改正しました。さらに、平成29年の3月の定例会などでは、以下の議会で後払い導入のための条例改正が行われています。
福知山市議会・矢板市議会・小浜市議会・大網白里市議会・四日市市議会・雲仙市議会・伊勢崎市議会・綾部市議会・城陽市議会・羽曳野市議会・京都府久御山町議会・富山県入善町議会・宮城県女川町議会
もしかしたら、議会基本条例のように大きなムーブメントを起こすかもしれません。ただ、後払いへの条例改正案が否決されたり、議論が途中でしぼんでしまう議会もあります。「若い議員などには費用の先払いが大変だ」とか「事務局が負担に耐えられない」といった反対意見に押し切られるところもあるようなのです。
前者の理由は交付の回数を増やすことでカバーすることができます。現に四日市市議会は月単位での交付を認めています。ただ、後者の理由については、なるほど、心配です。後払いといっても、兵庫県議会のように、会派にいったん前払いをして、会派が個々の議員に後払いをする「会派精算方式の後払い」の場合には、会派がチェック機能を果たすことが期待できます。しかし、議員や会派が直接、自治体から後払いを受ける「完全後払い方式」の場合には、そのチェックの役割は事務局に回ってくるからです。「適正化のためには仕方がない」と思いつつも、事務量増大の不安におののく事務局職員は多いかもしれません。「後払いの予習」さんも、そうしたひとりなのでしょう。