2025.04.25 New! 医療・福祉
第7回 老人ホーム施策に老人当事者の声は反映されているか(後編)
主任介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉学(修士修了)
/地域包括支援センター管理者(杉並区) 本間清文
有料ホームの良しあしを見極めることの難しさ
前編にて、有料老人ホーム(以下「有料ホーム」といいます)を探すことの難しさが、入居紹介事業者(以下「紹介事業者」といいます)なるものを生み出し、その紹介料がエスカレートした結果、紹介料が150万円にも上るビジネスになっていることの課題を見てきました。
しかし、特に退院先の確保は、退院患者を抱える病院などにとっては切実な問題です。自宅に退院することもできず、安価な公的施設にはすぐには入れないとなると、患者に退院してもらいたくても退院してもらえない病院は困ってしまいます。そこで退院先の選択肢に有料ホームが挙がります。このとき、有料ホームを探すために病院の医療ソーシャルワーカーなどから紹介センターを案内してもらうことがよくあります。
そして、有料ホーム紹介に際し、入居する老人やその家族にとって最適な施設が選択されれば何も問題はありません。
いえ、例えば、自分の親が有料ホームに入るとして、本当に最適な施設を紹介してもらえるなら、多少の手数料は支払ってもよいとさえ、私なら考えます。不動産屋などに物件紹介を依頼した際の手数料のように。
しかし、当たり前のことですが、有料ホームは不動産とは全く違います。「住まい」という要素もなくはないですが、老人にとっては、そこでの医療や介護の質の方が大事なことが多いでしょう。たとえどれほど大きなシャンデリアのある施設であっても、汚れたオムツのまま取り換えてもらえなかったり、隣の部屋の入居者から意地悪をされるような施設であったならば、入りたいと思うはずがありません。
しかし、紹介事業者から、そのような有料ホームを紹介されないとも限りません。なぜなら、そうした医療や介護の質というのは、本当のところ、実際にしばらくの間、施設に入り生活してみなければ分からないからです。職員体制やリハビリの有無、医療処置の可否や認知症の受入れ状況などを把握している紹介事業者はいますが、それらは、数字などに表れやすい表面的なことだけなのです。