2017.02.27 議会事務局
第21回 増加するICTを活用した議会広報
議会事務局実務研究会 林敏之
自治体議員の皆様、こんにちは。今回は議会広報について主にホームページ(HP)やTwitter(ツイッター)などのSNSを用いた方法についてお届けいたします。ほとんどの議会では議会HPを開設しており、紙媒体である議会だよりとともに議会広報のメインとしての役割を果たしていると思います。また、ツイッターやFacebook(フェイスブック)などのSNSを取り入れている議会も増加傾向にあります。AR(拡張現実)技術を用いて、紙の広報紙に動画情報サービスを取り入れる動きも出始めています。議会広報はこれからどのような方向に向かっていくのでしょうか。
使いやすい議会HPって?

全国市議会議長会(1)によると、議会HPはすべての市で開設されており、比較的少ない予算で効率的に広報ができるツールとして広く利用されていることが分かります。HPには、「議員名簿」と「会議日程」、「会議録」の掲載率が高く、これらは議会として重要なコンテンツです。調べたいときにアクセスすれば情報を入手できるHPは、現在の議会広報において一番重要な役割を果たしているといっても過言ではありません。
自治体議会で発行されている議会だよりは、新聞折込みや全戸配布などにより多くの住民の手元に届けられますが、発行までに時間がかかり、タイムリーな記事をお届けすることができません。「何で議会だよりはすぐに届かないんだ。新聞だって翌日には届くんだ、公務員の怠慢だろ」とおっしゃってくる住民の方が年に1人くらいいます。それだけ議会のことをすぐに知りたいという熱い要望を持った住民の方がいることに感激するのですが、議会だよりと日刊の新聞とではその性質がそもそも違うので、なかなか要望にお応えすることができません。そこで、速報性の部分を補完できるツールとしてもHPは存在しています。決定したことをすぐに情報提供ができるのは、紙の議会だよりにはまねができません。近年では後で述べるように、より速報性のある情報提供として、ツイッターやフェイスブックのようなSNSを利用して、能動的に情報を伝えようとする動きもあります。
また、ほかにも過去の資料をいつでも閲覧できるという役割も重要です。ほぼすべての議会HPでは過去の会議録も検索することができるため、紙の会議録を端から調べていくのに比べて格段のスピードで目的にたどり着くことができます。
なお、近年では議会開会前にできる範囲で事前に資料を公開しようという動きがあります。市民目線で考えたときに、議員と同じタイミングで事前に資料を入手できる議会こそ、情報公開の最先端を行っているともいえるのではないでしょうか。
このように、議会だよりでは間に合わない情報提供のスピード感と、資料の積み重ねによる資料の保管庫としての役割の両方が機能してこそ使いやすいHPとなります。
SNSを利用した議会広報の現状は?

議会における広報としては「議会だより」と「議会HP」が双璧として存在していますが、近年ツイッターやフェイスブックといったSNSを用いた広報が徐々に増加しています。SNSの最も特徴的な性質として、双方向性が挙げられます。議会からの一方的な情報の提供だけではなく、議会に対し市民からも感想や意見を述べることができるのです。また、拡散性も特徴として挙げられます。例えば、○○議会のツイッターの内容がすばらしく、ほかの人にも教えたいと思った場合に、その内容をリツイートすることによって、自分のツイッターを見ている人全員に、その内容を教えることができます。有名人のツイッターは多くの人が見ていますので、その人が○○議会のツイート内容をリツイートすることで、とても多くの人が議会ツイッターの内容を知ることになるのです。
しかし残念なことに、ほとんどの議会のツイッターやフェイスブックは「発信専用で返信しません」とされています。双方向性という特徴を自ら封じ、情報発信ツールとしての利用しかされていません。またツイート内容も「本日○○委員会が何時から始まります」とか「本会議は現在休憩中です」といった事務連絡がほとんどです。「ぜひみんなに知ってほしい内容だからリツイートしよう!」と思えるような内容はあまり見たことがありません。現状では、残念ながらSNSの特性を生かした議会広報を行っていると胸を張っていえる状況ではないようです。もちろん「議会情報を提供するチャンネルを増やすのが目的である」という割り切った考え方もひとつです。同じ内容でも多くの媒体で情報を発信することで目にする機会を増やすことは重要です。しかし、積極的にツイッターをフォローする層と議会HPを利用する層は、ほぼ一致するのではないでしょうか。そう考えると、HPとSNSの内容は差別化する必要があります。毎回同じ関係者とおぼしき人が「いいね!」をしていたり、フォロー数が開設直後に増加したものの、その後ほとんど変化がなかったり……心当たりはありませんか?