2025.02.10
第22回 年金受給者がお金を借りるには
弁護士 千葉貴仁
年金受給者がお金を借りるには。
現在、年金を担保にお金を借りる制度はない。居住地域の自立相談支援機関等に相談するとよい。
年金を担保にお金を貸すとする業者や、お金を貸す場合には年金手帳の提出を求める業者があったが、このような年金担保融資が社会問題化し、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という)の一部改正(違法年金担保融資対策法。平成16年12月28日施行)により、これらは違法(貸金業法20条の2)となった。
そして、年金を担保にお金を借りることができるのは、従前、①独立行政法人福祉医療機構(WAM)と②日本政策金融公庫の恩給・共済年金担保融資の2か所のみであったが、上記①の独立行政法人福祉医療機構が実施していた年金担保貸付制度については、令和4年3月末をもって申込受付を終了した。
また、上記②の日本政策金融公庫においても、令和4年3月末をもって、軍人恩給や援護年金などを除き、申込受付を終了した。
したがって、現在、年金を担保に借入れをする制度は存在しないが、生活や困りごとや不安を抱えている方、家計に関する支援を希望する方に関しては、居住地域の自立相談支援機関等に相談することは可能である。
1 「自立相談支援機関」について
① 利用対象者
生活に困りごとや不安を抱えている方。
② 支援内容
相談内容に応じて、どのような制度やサービスが必要かを一緒に考え、具体的な問題の解決に向けた計画を作成し、寄り添いながら支援を行う。また、より具体的に収支状況の改善に向けた家計改善支援事業(家計管理に関する支援、滞納の解消や各種給付制度等の利用に向けた支援、債務整理に関する支援、必要に応じて貸付のあっせん等)の利用を案内することがある。
2 生活福祉資金貸付制度
年金を担保としなくとも、例えば、必要に応じて、社会福祉協議会が実施する低所得者世帯等を対象とする「生活福祉資金貸付制度」を利用することも可能である。
福祉資金は、日常生活を送る上で、又は自立生活に資するために、一時的に必要であると見込まれる費用を貸し付ける資金である。対象世帯については、次のとおりである。
① 低所得世帯
必要な資金を他から借り受けることが困難な世帯(市町村民税非課税程度)。
② 障がい者世帯
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方(現在、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)によるサービスを利用している等、これと同程度と認められる方を含む)の属する世帯。
③ 高齢者世帯
65歳以上の高齢者の属する世帯(日常生活上、療養又は介護を要する高齢者等で、一定の収入要件あり)。
それぞれの貸付には、記載している以外にも条件等がある。また、各都道府県社会福祉協議会による審査がある。
3 その他の貸付・支援制度
以上のほかに、ひとり親を対象とする貸付制度(母子父子寡婦福祉資金貸付金)や医療費の自己負担分が高額になった場合、一定の金額を超えた分が後で払い戻される制度(高額療養費制度)、埋葬費の支給などの、各種の支援制度がある。
様々な貸付・支援制度があるため、年金受給者であれ、生活資金に困り、家計に関する支援を希望する場合、まずは、居住地域の自立相談支援機関等にご相談ください。