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2024.11.11 仕事術

第26回 どうする総合計画①

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元所沢市議会議員 木田 弥

 今回は、市が提案してきた総合計画を修正した話です。
 2018年の所沢市第6次総合計画基本構想及び前期基本計画について、所沢市議会は15か所を修正可決しました。議会による総合計画の修正は、修正の程度によっては首長の提案権を侵害するのではないかといった見解もあり、裁判にもなった名古屋市会による修正例(2010年6月)以外には、調べた範囲ではあまり例がないようです。
 所沢市議会が、どのような体制で議論し、どのような手順で修正したのか、参考になさってください。
 実際の事例を紹介する前に、総合計画の地方自治法上の位置付けの変化、及びそれに伴う議会の関与の変化について紹介します。新人議員の方は、総合計画の基本構想が議会の議決事項であった時代をご存じない方が大半かもしれませんので。

市町村総合計画(基本構想)の策定義務がなくなる

 2011年5月2日に「地方自治法の一部を改正する法律」が公布され、市町村の基本構想の法的な策定義務がなくなりました。
 削除された地方自治法2条4項は以下のとおりです

 市町村は、その事務を処理するに当たつては、議会の議決を経てその地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本構想を定め、これに即して行なうようにしなければならない。

 市町村の総合計画は、この条文を根拠にして策定されていました。この条項がなくなったということは、基本構想及び総合計画の策定義務もなくなったということです。
 同時に、議会による基本構想の議決についての義務規定もなくなってしまいました。
 総合計画の策定についての義務規定がなくなった現在、法改正などなかったかのように、多くの市町村では総合計画を策定しています。
 2024年8月に日本生産性本部が調査報告した「令和6年度『自治体総合計画に関するアンケート調査』結果」(有効回答数760団体)(https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/20240828_report_v2.pdf)によれば、総合計画について97.2%の団体が「計画期間中の総合計画がある」と回答し、さらに93.6%の団体が「今後も策定する予定である」と回答しています。
 また、総合計画を策定する根拠については、「根拠はない」とする団体が15.2%、「議決すべき事件を定める条例」が38.0%、「総合計画条例」が24.9%、「自治基本条例」が21.1%と報告されています。
 さて、皆さんの市町村は、どの条例で総合計画策定を位置付けていますか? まず、条例上の「根拠はない」のに相当の予算をかけて総合計画を策定するのは論外です。条例を制定しないことによって、せっかくなくなった議会による基本構想の議決を復活させたくないという執行部側の思惑でもあるのでしょうか。それとも、ただ面倒なので予算事業として総合計画を策定しているのでしょうか?
 もし皆さんの市町村が条例上の根拠もなしに総合計画を策定しているとするなら、ぜひ一般質問や予算議会で問いただしてください。もちろん議員発議による条例提案も選択肢の一つです。
 「議決すべき事件を定める条例」を根拠とするというのも本末転倒です。議会の議決が保障されている点はよりマシですが。やはり本来は、「自治基本条例」若しくは「総合計画条例」で位置付けるのが法治主義の原則かと思われます。「自治基本条例」は重量級の条例ですから議員発議は難易度が高いですが、「総合計画条例」であれば条文数もそれほど多くないので、議員提案条例は格好のテーマです。所沢市自治基本条例については、筆者も自治基本条例制定に関する特別委員会委員長として議会における審議と条例修正に関わりましたので、以後の連載で取り上げる予定です。
 所沢市では地方自治法改正後、所沢市自治基本条例に位置付けることによって、法的根拠を確保しました。
 具体的にどのように記述されているか、所沢市自治基本条例を確認します。同条例22条2項1号に基本構想を、同項2号に基本計画の策定を、そして同項3号に実施計画を、それぞれ規定しました。
 

○所沢市自治基本条例
   第8章 市政運営
 (総合計画)
第22条 市長その他執行機関は、本市を取り巻く社会情勢の変化を踏まえ、総合的かつ計画的な市政運営を図るため、この条例に則して総合計画を策定し、実施に当たっては適切な進行管理を行わなければなりません。
2 総合計画の構成は、次のとおりとします。
 ⑴ 基本構想 まちづくりの理念及び将来都市像並びにこれらを実現するためのまちづくりの目標を示したものです。
 ⑵ 基本計画 基本構想を実現するため、まちづくりの目標に対する現状、課題及び課題解決に向けた施策の方針並びに施策の体系及び主要な事業などを示したものです。
 ⑶ 実施計画 基本計画で示された施策及び主要事業並びに新たに生じた課題解決に向けて必要な事業など、実施の時期及び実施に当たっての具体的な方策を示したものです。
3 本市の政策は、総合計画に基づいて行われるものとします。
4 市長その他執行機関は、総合計画の策定に当たっては、その企画立案の段階から市民等の参加による取組みに努めなければなりません。
5 市長その他執行機関は、総合計画の進捗状況について毎年度、報告会を開催するなど、市民等にわかりやすく説明し、市民等の意見を聴取しなければなりません。

 もし、「総合計画条例」を提案されるのであれば、この条文を参考にされるとよいでしょう。ただし、この条文には総合計画の議会による議決については書かれていないので、その部分は加えた方がよいでしょう。あるいは所沢市のように、議決については別途、議会の議決すべき事件を定める条例で規定する二段構えの方法も考えられます。

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