2024.10.10 医療・福祉
第5回 若年性認知症支援の難しさ
主任介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士
/地域包括支援センター管理者(杉並区) 本間清文
制度は整いつつあるものの
介護の業界に入って30年近くになりますが、若年性認知症の方に会ったことは、そう多くはありません。しかし、30年程前にもいらした覚えはありますし、その問題の深刻さは今も大きく変わっていないように思います。
一方、法的には、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行され、「認知症施策推進基本計画」についても今年度中に策定されるようです。
ただし、そうした制度や枠組みができたところで、現場における若年性認知症の方への支援の難しさは大きく変わらないのではないかという懸念があります。
そこで、今回は、少ないながらも筆者が関わってきた経験を基に、若年性認知症の方への支援の難しさを論考しようと思います。
つぎはぎ(パッチワーク)の制度
若年性認知症支援の特徴を高齢者の場合と比較して考えたとき、大きく違うのは、その課題領域の広さです。
というのも、90代の要介護の高齢者の場合は、医療に生活、お金の管理などのポイントを押さえられれば、何とか支援が可能となる場合が多いですが、若年性認知症の方の場合はそれだけでは済まないことが多いのです。
仕事のこと、(扶養)家族のこと、意思決定のことなど多岐にわたる問題が出てきます。そして何より、対象者は少ないですが、問題が深刻であることが特徴といえるでしょう。
そのような中、利用できる制度は一見たくさんあるように思えます。以下が、一般的に利用可能といわれている制度です。
・介護保険サービス
・障害福祉サービス
・障害基礎年金
・自立支援医療制度(精神通院医療)
・精神障害者保健福祉手帳
・成年後見制度
・生活保護制度
・雇用保険制度(失業等給付)
上記の各種制度は細分化されており、例えば介護保険では40種類近いサービスがあります。それは、お年寄りなどには複雑すぎて分かりにくいため、地域包括支援センターやケアマネジャーといった調整役が配置され、制度運用の効率性を高めているといえます。
しかし、利用する制度が介護保険だけならよいのですが、若年性認知症の方の場合は、それだけで終わりません。上記に並べた各種制度に、さらに細分化されたサービスや手続が設けられており、それをつぎはぎのようにつなぎ合わせながら、当事者に見合った支援サービスを調整していかなければなりません。若年性認知症の方に特化した制度がないために、結果的に様々な制度のパッチワーク支援となっているのが現状です。
しかし、介護保険のケアマネジャーは、支援の対象が90代前後の高齢者が大多数ですから、障害福祉サービスなどの利用や手続に不案内なことが珍しくありません。