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2024.09.25 仕事術

第25回 どうするモンスター住民②

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元所沢市議会議員 木田 弥

 一般質問を通じて、Aさんグループに対して一定程度のけん制を行うことがひとまずできました。公民館において、本来あってはならない私物の預かりが横行していることを執行部が認識していること、それが違法であることは認めたわけです。
 質問後、すぐに物置が撤去されることは期待していませんでした。狙いは、間近に迫った公民館の建て替えをきっかけに、公民館友の会の私物が満載の物置を撤去することでした。うまい具合に、私の地域の公民館は2012年での建て替えが決まっていました。建て替えに向けて、その物置はいったん撤去されます。新しい公民館の敷地には友の会の物置を設置させないよう引き続き執行部に対して働きかけることとしました。

野党的モンスター住民に徹底的に詰(なじ)られる

 一方で、友の会の物置ではないのですが、市政報告会などで学習室を利用した際に、昭和40〜50年代の児童書や図鑑などの書籍が、学習室の棚に配架されているのがいつも気になっていました。しかも、「さわるな」という張り紙表示もありました。仮に学習室の備品であれば、利用者は誰でも閲覧可能なはずです。
 私物撤去の一般質問を行った後でもあり、公民館の職員には、公民館の備品でなければ直ちに撤去すべきではないか、また、備品であったとしても、学習室ではなくしかるべき場所に収納すべきではないかと伝えました。
 公民館の職員は、私が一般質問をしたことを知っていてか、こちらは程なくして片付けられました。後で分かったのですが、この書籍は、所沢市在住の外国人の人たちに日本語を教えるサークルの皆さんが教材として使っていたものだったようです。そのサークルのメンバーもやはり友の会の有力会員で、Aさんとも親しい関係でした。
 さて、その外国人に日本語を教えるサークルの主宰者Eさんも、活動自体はすばらしいですが、私の観点からすれば、やはりモンスター住民に分類される方です。モンスター住民は、与党的モンスター住民と野党的モンスター住民に分類されるようです。与党的モンスター住民は、自分たちの権益確保が最優先なので、執行部にも協力的です。Aさんグループも、市主催のマラソン大会のボランティアなどに積極的です。しかし、こと権益を阻害するような動きがあれば、前回も述べたように、いうことを聞かない職員の異動を画策するなど激しく抵抗します。
 一方で、野党的モンスター住民の場合は、基本的に市政に対する批判をいといません。Eさんは野党系モンスター住民であり、その後、市政を騒がせた前市長による小中学校への空調設備設置見直し問題でも、反市長の立場で熱心に活動されていました。
 議会報告会の実施のために、新装した地域の公民館を訪問したところ、突然Eさんグループから私に話があるといってきました。
 Eさんグループの話は以下のような内容でした。「私たちは日本語が分からなくて困っている人のための活動をしている。これは公的な活動である。しかし、どうやらあなたの(公民館からの私物撤去の)質問のせいで、せっかく私たちが確保していた書籍類を公民館に保管できなくなった。日本語講座のたびに家から持参することになり大変だ。あなたは影響力のある議員なので、理詰めで迫るあなたの論法に職員はなかなかノーとはいえない。しかし、私たちは相当困っている」というのです。
 さらに、「次の議会で、私たちの私物は置いていいということを確認する一般質問をせよ」といいます。私は、「それはできません。いくらすばらしい活動であったとしても、法の下で適正に実施すべきでしょう」と回答。それに対して、Eさんとその取り巻きはさらに怒りを増幅させたようで、「みんなで次の選挙ではあなたに投票しないようにいっている。またそうしたい」とのことでした。私としても、そんなお為ごかしな一般質問などできませんし、もとより、Eさんグループが私を積極的に支援してくれた記憶もないので、丁重にお断りしました。こうした押し問答が30分ほど続きました。正直ぐったりと疲れましたし、こうなったら徹底的に公共施設から私物を撤去することを自分の政治テーマに掲げようという意欲が湧いてきました。実際にその後、議会選出監査委員としても、公民館や学校などの利用者の私物排除を徹底しました。

老人福祉のためと称してやりたい放題

 Aさんグループに対する孤独な戦いの端緒が開かれたのですが、普段からAさんグループの専横に不満を持っていた人も多かったようで、次々に援軍が現れました。一人目は、公民館とは当時、別の場所にあった、所沢市の出張所長のFさんです。出張所と同じ施設には、老人福祉センターG(以下「施設G」といいます)がありました。この施設も、Aさんがなぜか利用者代表という資格で事実上支配しており、Aさん専用の机が施設Gにはありました。施設Gのコピー機を利用して、老人福祉とは関係のないAさんに関係する団体の印刷物が印刷されていたともいわれています。施設Gの市職員も、おいそれとは手出しできません。
 Aさんは、長生クラブ連合会の代表も務めていました。長生クラブ連合会とは、町会単位などで運営される長生クラブの地域における連合体です。長生クラブ連合会では、地域の老人福祉のために、古紙回収を行っていました。古紙回収で得た収益は、原則、町会単位の長生クラブの活動を補助するために使われることになっています。それはそれで、活動としては良いことです。
 古紙回収業者が回収に来る期日は決まっていたため、Aさんグループが回収した新聞紙が、施設Gに山積みになっていました。新聞紙は可燃物ですし、そもそも古紙回収は、施設Gの本来業務ではありません。Fさんは、Aさんに対して撤去を求めました。Aさんは当初、撤去することを渋っていましたが、私も執行部の施設Gを所管する高齢者福祉課に、このことに対処すべきと強く迫るなどしたため、ようやく撤去に応じました。以前、同じようにAさんに対して注意した出張所長は、地域の団体が集まる会議で、「新任そうそう、地域のことを分からんやつが余計な口出しをするな」と叱責(しっせき)されたそうです。叱責された所長は、涙ながらに、当時の地域の連合町内会長Hさんにその悔しさを語ったそうです。二人目の援軍がこのHさんです。
 実は、長生クラブ連合会の古紙回収というのが食わせ物で、古紙回収で得た収益の9割を自分たち長生クラブ連合会の古紙回収メンバーで利用していたことが後に判明します。なぜ判明が可能であったかといえば、古紙回収は市からのリサイクル補助金が出るため、会計報告の必要があり、回収した古紙の量を報告する義務があったからです。
 リサイクル補助金は、回収した古紙の量に対する対価のほぼ同額を市が支給します。そのため、リサイクル補助金は、町内会や子供会、長生クラブなどの公的な団体の古紙回収にしか支給されない決まりになっていました。しかし、連合町内会長Hさんから、「彼らは単位の長生クラブにほとんど還元せず、自分たちの旅行に使っている」と教えてもらいました。
 そこで、Fさんと協力して、リサイクル補助金を所管する環境クリーン部に対して、Aさんグループに限らず、全てのリサイクル補助金受給対象の団体に対して、その使途及び証憑(しょうひょう)(地域の単位長生クラブからの実際の受取証書)の開示を求めてもらうことにしました。私からだけの要望であれば、執行部は動かなかったでしょうが、職員からの信望が厚かったFさんの依頼であったためか、執行部も積極的に協力してくれました。担当者によれば、Aさんグループの補助金使途については別の人からも申立てがあったようです。やはりAさんグループは証憑を提出できませんでした。提出できたのは、うわさどおり1割でした。環境クリーン部では、証憑が提出されるまでは、補助金を支給しないこととしました。Aさんグループは、しばらくは証憑を提出できなかったようでしたが、結局、これまでのもうけを吐き出して、本来の目的どおり長生クラブに還元したようです。Aさんグループは、旅行費用とするだけでなく、ため込んだお金で古紙回収のための軽トラックを購入し、所有していました。

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