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2024.07.25 仕事術

第23回 どうする議会基本条例③

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元所沢市議会議員 木田 弥

 前回は、議会基本条例第2次案(議会原案)を12月定例会の本会議で報告したところまでをお伝えしました。工程表では、3月定例会までに提案することになっていました。そのためには、議会原案に対する市民からの意見聴取を丁寧に行い、その内容を適切に議会原案に反映させることが求められました。
 議会原案の作成までに、特別委員会としての考え方の整理も進んできました。特に、執行部からも懸念が表明された、附属機関の設置をどう扱うかについては、条文として整えるだけでなく、なぜ附属機関を設置する条文が所沢市議会にとって必要なのかを市民や執行部に理解してもらう必要がありました。そこで、議会基本条例前文にその理由を記述することとし、同時に、「所沢市議会基本条例の趣旨及び解釈」を作成しました(1)

前文に所沢市議会の決意表明を盛り込む

 第2次案で最も力を入れたのが、前文です。前文が、所沢市議会のあり方に対する決意表明となっています。少し時間軸を戻して、前文の意図や制定経緯について説明します。先ほどの「所沢市議会基本条例の趣旨及び解釈」では、前文を以下のように説明しています。
 「前文では、法律等の定めに基づく議会の役割、自治体を取り巻く時代背景とそれに伴って変化してきた議会及び議員の役割、所沢市議会におけるこれまでの議会改革の取組等に言及しながら、この条例の制定趣旨について明文化しています。」(所沢市議会基本条例の趣旨及び解釈)
 以下は、所沢市議会基本条例の前文です。

 市議会は、日本国憲法によって定められた市民を代表する唯一の議事機関であり、地方自治法第96条第1項に規定する議決事件に留まらず、法律に反しない限り、議決すべき事件を定める権限等を有する。
 市議会は、二元代表制の下、市長等執行機関との健全な緊張関係を保持しながら、立法機能及び監視機能を十分発揮し、もって地方自治の本旨の実現を目指さなくてはならない。
 所沢市議会は、平成9年4月、全国に先駆けて議員提案により「ダイオキシンを少なくし所沢にきれいな空気を取り戻すための条例」を制定し、また、政務調査費の使途の明確化、政治倫理規程の制定など、議会改革にも取り組んできた。
 平成12年4月に施行されたいわゆる地方分権一括法は、本市が自らの責任において、その組織及び運営に関する様々な決定を行うことを可能とし、このことにより、議会の役割の重要性はさらに高まった。
 議会及び議員は、より一層の市民からの信頼に応えるため、積極的な情報の公開を通じて説明責任を果たし、議会諸活動への市民の参加のもと、平等の権利を有する議員相互の自由闊達な議論を展開しながら、市政の論点を明らかにして、政策立案及び提言を積極的に行っていかなければならない。
 以上の目的を達成し、これまで積み重ねてきた改革への取組を確かなものとするため、議会及び議員の責務を自覚しながら、市民の負託に応えられる議会を目指し、全力で取り組んでいくことを決意し、ここに、この条例を制定する。

 前文には、その後に続く条文を裏打ちする重要な論点を2点、織り込みました。所沢市議会基本条例にとって重要な部分ですので少し詳しく説明します。
 一つは、「市議会は、日本国憲法によって定められた市民を代表する唯一の議事機関」であることを明記したことです。
 この表現は、日本国憲法93条「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する」からきています。憲法上は、地方議会は必置です。首長は必置ではありません。一方、地方自治法139条2項には「市町村に市町村長を置く」と規定されています。議会は憲法で保障された組織であり、首長は地方自治法で規定されているにすぎません。ともすれば、議会は、首長の諮問機関といった印象を持たれがちですが、まずは住民の民意を代表する議会があって、その前提に立って執行機関及びその長が存在するという仕組みになっています。地方自治法も第6章が議会、第7章が執行機関です。そのことを改めて確認したのが、この前文の一節です。
 もう一つは、附属機関の設置にも関連するのですが、「地方自治法第96条第1項に規定する議決事件に留まらず、法律に反しない限り、議決すべき事件を定める権限等を有する」と記述したことです。
 地方自治法96条1項に議会の役割が15項目列挙されています。ここに書いていないことはできないという消極的なことではなく、書いていないことはできる、ということをあえて宣言の意味も込めて踏み込んで表現しました。
 これは、所沢市議会の独りよがりではなく、廣瀬克哉・法政大学教授に地方自治法100条の2に基づき議会に提出していただいた「議会基本条例の制定について」というレポートに基づきます。
 廣瀬教授のレポートによれば、「この地方自治法第96条に関しては、従来第1項に列挙され法定された議決事件について『制限列挙』という呼び方が使われることが一般的であったが、第2項で条例による追加を認めているため、第1項の趣旨が誤解されるきらいがあった。その点について、2008年6月17日の第29次地方制度調査会第11回専門小委員会での総務省行政課長の説明では、第1項の法定された議決事件について『必要的議決事件』、第2項に規定された条例による追加について『任意的議決事件』と呼称が変更されている」とのことであり、このレポートに基づき当該部分を書き込みました。
 続いて、先輩議員にも敬意を払って、これまでの所沢市議会の議会改革の歴史についても記述しました。「所沢市議会は、平成9年4月、全国に先駆けて議員提案により『ダイオキシンを少なくし所沢にきれいな空気を取り戻すための条例』を制定し、また、政務調査費の使途の明確化、政治倫理規程の制定など、議会改革にも取り組んできた」と紹介しています。この部分では、過去の所沢市議会の先進的な議会改革の取組みを改めて確認しています。
 また、「これまで積み重ねてきた改革への取組を確かなものとするため、議会及び議員の責務を自覚しながら、市民の負託に応えられる議会を目指し、全力で取り組んでいくことを決意し、ここに、この条例を制定する」と宣言しています。以前、北海道栗山町議会の議会基本条例制定の役割としても紹介しましたが、議会基本条例の制定は、議会改革を一時の熱狂に終わらせるのではなく、熱狂が過ぎ、関係者が引退した後も、議会改革の成果を後退させないために、条例制定を行ったということをあえて強調しています。
 前文については、作業部会ではなく、委員長と副委員長で原案を作成し、その内容を作業部会及び特別委員会で検討していただきました。

 

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