2016.10.25 議会事務局
第17回 よくある住民から議員への批判
議会事務局実務研究会 林敏之
自治体議員の皆様、こんにちは。今回は、よくある議員への批判について、実際に議会事務局で耳にした内容を中心にお届けします。事務局にいると、住民から請願の出し方や議会日程の問合せなどのほかに、議会や議員個人への批判や苦情も寄せられます。とかく厳しい目が向けられる「議員」という職業ですが、様々な批判についてどのように対応すべきなのでしょうか。
富山市議会における政務活動費の不正受給が大きく取り上げられ、その後全国の議会で政務活動費の不適切な取扱いが次々と判明しています。今年(2016年)7月に、いわゆる号泣議員の政務活動費詐取事件の判決が確定し、きちんとした政務活動費に関する議論がやっとできるようになったと思っていたところだったので残念でなりません。
さて、今回の事件を受け、政務活動費を中心とした「議員と金」にまつわる批判が再燃しています。政務活動費は第二の報酬であり、さらにほかにも市民にいえないお金をもらっているのではないかと疑念の目を向けられています。政務活動費の本来の目的や必要性についてはほとんど取り上げられることがなく、「政務活動費=悪」という認識を助長するような報道が多くなされています。
実際には、約8割の市では政務活動費の額は5万円未満となっており(1)、わざわざ領収書を改ざんして裏金をつくろうとするような額ではないのではないかと思います。サラリーマンであれば会社から支給される出張の交通費や宿泊代、各種セミナーの参加費などの必要経費を政務活動費から支出してしまえば、あっという間になくなってしまう金額です。メディアによる議員たたきの報道の影響も大きくありますが、議員自身がその説明を怠っていたこともひとつの原因として、政務活動費に対する住民の理解はあまり得られていません。
富山市議会での不正の原因のひとつとして、政務活動費の領収書を公開していなかったことが挙げられます。昨今、多くの議会で議会基本条例が制定され、領収書の公開を義務付けています。インターネット上に公開されると考えれば、領収書の偽造やグレーな支出などに対し、自己抑制がかかります。また、議会事務局でも緊張感を持ってチェックをするようになります。隠すから痛くもない腹を探られるのです。なお、政務活動費の支出について「政務活動費の領収書は議会事務局がチェックしているのだから、何かあったら議会事務局長が困ることになる。説明しなくてはいけないのだから」と新人議員に教えていたベテラン議員がいましたが、その認識は間違いです。今回の件を見ていれば明らかですが、最終的な説明責任は議員自身にあるのです。話が脱線しましたが、今後は、支給される政務活動費の金額の根拠について説明を求められるのではないかと思います。「政務活動費を定めた条例は議員提出議案ではなく首長提案だし、金額は特別職報酬等審議会で決定したものだから、議員は全く関与してないよ」という説明では住民は納得しません。使途をきちんと精査し、その上で足りないということであれば、増額を求めてもよいのではないでしょうか。
(1) 政務活動費を交付している市のうち、78.9%が5万円未満となっています(全国市議会議長会「平成27年度市議会の活動に関する実態調査結果(平成26年1月1日~12月31日)」(平成27年8月)。