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2016.10.11 政務活動費

第28回 政務活動費の第三者機関は直接、調査することはできないのか

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議会事務局実務研究会 吉田利宏

■お悩み (ここが正念場さん 40代市議会議員)
 同僚議員が政務活動費を不正受給した疑いを持たれ議員辞職しました。市議会では「政務活動費の在り方検討会」を立ち上げ、政務活動費に関する改革を行うことになりました。私が座長を拝命し、議論を進めています。すべての領収書をインターネット上に掲載することについては大方の合意がとれました。しかし、政務活動費の使われ方のチェックなどをする第三者機関の設置については議論がまとまりません。特に、調査権限について議論があります。「外部の委員が議員や会派からヒアリングなどすべきではない」と強く主張する議員がいるのです。「議会の自律権を侵しかねない」とまでいわれると十分に反論できないのですが、第三者機関を設置しても、個別の案件についての調査をしたり、直接、議員などからヒアリングすることはできないのでしょうか。

回答案
A 政務活動費の使い方は会派や議員こそが責任を持つべきある。第三者機関は政務活動費の使途基準などについてアドバイスをすることは可能であるが、外部の機関であり、個別の政務活動費の使途を調査したり、意見をいうことまではできない。
B 議長には政務活動費について報告を受け、透明性確保などの義務が課せられている。第三者機関はそうした議長の諮問機関であり、必要な調査を行うことができるとするのが普通だ。それぞれの議会で決めることだが、第三者機関が直接、議員などからヒアリングを行うことも特段問題はない。
C 政務活動費は一種の補助金であり最終的な支出の権限は市長にある。議会の自律権の問題ではなく、予算執行権との関係で、第三者機関は市長の諮問機関として置くべきである。

お悩みへのアプローチ

 政務活動費の不正受給者が出たとはいえ、領収書の公開を決めたとのこと、「ここが正念場さん」の議会はさすがです。改革を小出しにして、住民の怒りを倍増させる議会も世間にはあるものです。ただ、第三者機関についてはなかなかまとまらないようですね。第三者機関の名称は、「政務活動費検査員(堺市)」や「政務活動費調査等協議会(兵庫県)」などいろいろで、その根拠も条例から要綱まで様々です。ただ、政務活動費の使途をチェックする組織ですから、本音の部分で「困っている」議員もいるはずです。とはいえ、「これまでどおりでいいじゃない」というわけにいきませんから、もっともらしい理由を並べて慎重論が語られるのでしょう。「議会外の人間が判断することは難しい」とか「議会の自律権にかかわる」などという反対論はそうしたものに違いありません。「議会の自律権」なんていわれると、なんだか反論しにくくなります。しかし、考えてみてください。これまでの議会では不正が止められなかったので、新たなお目付け役が求められているのです。それに、第三者機関は純粋に外部の組織ではありません。公認会計士や弁護士などの有識者がメンバーとなることでしょうが、議長の諮問機関として置かれるのが普通です。
 議長にはもちろん予算執行権はありません。しかし、地方自治法100条15項及び16項で、政務活動費について、収支報告書を受け、その使途の透明性の確保に努めるべきことが求められています。政務活動費の支給を受けた議員や会派が一義的に使途に責任があるのはもちろんですが、議長がこうした立場として果たすべき役割は別にあるのです。

○地方自治法
第100条 ①~⑭ 略
⑮ 前項の政務活動費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。
⑯ 議長は、第14項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。
⑰~⑳ 略

回答へのアプローチ

 第三者機関の権限は、議長の果たすべき役割を踏まえて、政務活動費全般に及ぼすことができます。収支報告書などのチェックはもちろん、疑義が生じたときには調査を行うことも可能でしょうし、議長が行う是正指導の内容などへ意見を述べることや、使途基準、手引きの見直しなどの制度設計への意見具申なども考えられます。その内容はそれぞれの議会で決めればいいでしょう。
 先ほども述べましたが、議長はその収支報告書などを「ただ受け取る」というわけではありません。適正なものであることを確認して受け取り、その使途を明らかにすることが求められているのです。そうした議長の役割を事務局とともに専門的な立場からサポートするのが第三者機関というわけです。こうしたことから、回答案Aは誤りとなります。また、議長のこうした役割は予算の執行権者としての立場とは異なるものですから、Cも誤りとなります。回答はBとしたいと思います。

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