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2024.06.10

第14回 定期借家制度とはどのようなものか

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弁護士 上村遥奈

Q定期借家制度とはどのようなものか。

A

定期借家制度とは、貸主と借主との合意によって、契約期間や賃貸料などを自由に定めて、契約期間の満了によって更新することなく終了する借家制度(借家権)のことである。

1 沿革
 平成3年10月4日、従来の借地法・借家法・建物保護ニ関スル法律の3法を統合する形で借地借家法(以下「法」という)が成立し、翌年8月1日に施行された。このとき、定期借家制度に関しては、賃貸人の不在期間の建物の賃貸について一定の要件のもと更新のない賃貸借を認めた「期限付建物賃貸借」の定めが設けられたが(法旧38条)、平成11年12月9日に成立した「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」(平成12年3月1日施行)によって旧38条を含む借地借家法の一部が改正され、より一般的な形での定期借家権が創設されるに至った。

2 定期借家権と普通借家権との違い
 定期借家権と通常の借家権(普通借家権)の主な違いは、以下のとおりである。
1
3 定期借家権の特徴
 このうち最も定期借家権を特徴付けているのは、更新がないという点である。
 定期借家契約においては、期間満了の1年前から6か月前までに事前通知を行っておけば、契約期間満了をもって貸主が契約を終了させ、借主に建物の明渡しを求めることができる。
 通常の借家契約(普通借家契約)では、契約で定めた期限が経過した場合であっても、貸主に「正当な事由」がない限り、借家契約の更新を拒絶して明渡しを求めることはできないとされ、これが貸主・借主間のトラブルの一因となっているともいわれていた。
 正当事由制度は借主保護という観点からは大きな意味を持つものではあるが、一方で、いったん建物を貸してしまうといつ返してもらえるか分からず、また、更新しても家賃の上げ幅が小さく、新たに借家として貸す家賃よりも低くなるといった、貸主側の不利益が指摘されていた。定期借家制度はこのような問題を解決し、借主と貸主との関係を対等に構築し直すものである。
 なお、更新はなくとも「再契約」は可能であり、新しく契約を結ぶことによって、期間満了後も同じ建物を借り続けることは可能である。ただし、この場合、あくまで新たな契約であるため、家賃の増減やその他諸条件の変更がなされ得ることに留意が必要である。

4 定期借家のメリットは
 貸主側のメリットとしては、契約期間の満了により確実に賃貸借契約が終了することで、賃料の増減など時世に応じた賃貸物件の経営が可能となることが挙げられる。また、ごく短期の契約が可能となったことで、より柔軟な空き物件の活用(例えば、数日~1か月の貸別荘契約や、数か月のテナント契約など)も期待されるほか、賃料の固定化と長期の定期借家契約を組み合わせることで、定期借家権を利用した不動産の証券化の道も開けたといえる。
 借主側のメリットとしては、更新のない定期借家契約であることで賃料がディスカウントされる場合も多く、より多くの選択肢の中から自らのニーズに合わせて物件を探すことができるようになったものといえる(例えば、単身赴任で一定の期間のみ遠隔地に居住することが決まっている場合、更新の必要性はあまりなく、定期借家契約を利用して低廉な賃料で良い物件に居住するという選択は大いにあり得るだろう)。

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