2016.10.11 政務活動費
政務活動費を廃止した泉南市議会
東京大学名誉教授 大森彌
泉南市は、大阪府の南部に位置し、1970年に単独で市制を施行、現在、人口約6万4,000人、アジアの玄関口となる関西国際空港の臨空都市としてのまちづくりを進めている。
泉南市議会は、議員定数は18名、2016年6月20日現在、会派構成は、公明党4、日本共産党4、心政クラブ2、拓進クラブ2、自由民主党泉南クラブ2、無所属3で、欠員1名となっている。次の市議会議員選挙は2016年10月23日の投開票という日程となっている。
この市議会では、2016年7月13日に平成28年第1回臨時会が開催され、議員提出議案として「泉南市議会政務活動費の交付に関する条例及び泉南市議会政務活動費の交付に関する条例の臨時特例に関する条例を廃止する条例」が提案され、全会一致で可決されたことから、2016年8月分より政務活動費は廃止されることとなった。政務活動費を廃止したケースは珍しい。後を絶たぬ政務活動費の不正使用が報道される中で、政務活動費自体を廃止するという思い切った決定を行ったケースである。これは、いわば既得権益の放棄であるから、条例廃止の理由は検討に値する。
身を削る改革の経緯
泉南市議会は、市の安定した財政運営のため、いわゆる「身を削る改革」を行ってきている。議員定数については、過去、一貫して定数削減を行っている。その変遷を見ると、1981年6月19日に議員定数30名とする条例を制定した(法定数36名)。1984年3月26日、条例定数30名を26名へ削減した(1984年10月の一般選挙より適用)。1998年12月22日、条例定数26名を23名へ削減した(2000年10月の一般選挙より適用)。2004年6月29日、条例定数23名を20名へ削減した(2004年10月の一般選挙より適用)。2011年6月22日、条例定数20名を18名へ削減した(2012年10月の一般選挙より適用)。そして、2016年6月21日開催の第2回定例会において、「近隣市の定数や厳しい財政状況を考えたときに16人が妥当」とする提案理由が説明され、議員定数を18名から16名に削減する条例案が賛成多数により可決されている(2016年10月の一般選挙より適用)。
35年間で、議員定数をほぼ半減している。議員定数が半減しても、議会活動に特段の支障がなく、議会の任務が十分果たし得ているかどうかは、別途検証されるべきであるが、定数削減の努力は顕著である。
議員報酬については、平成25年第2回定例会において「泉南市議会議員の議員報酬等に関する条例の臨時特例に関する条例」が制定され、2013年7月1日から2016年10月27日(議員任期満了日)までの間、議員報酬を6%減額している。減額前(本則)では議長:57万円を減額後(本則より6%削減)では53万5,800円に、副議長:52万円を48万8,800円に、議員:50万円を47万円にしている。
平成28年第1回臨時会において「泉南市議会議員の議員報酬等に関する条例の一部を改正する条例」が議員提出の議案として提案され、全会一致で可決されたことから、2016年8月1日より、議員報酬が本則より10%減額となった。議長:51万3,000円に、副議長:46万8,000円に、議員:45万円になっている。この減額により、月額報酬額を基礎に支給されている期末手当も減額となっている。