2024.05.13
第13回 自分の住んでいる町の財政状況をチェックするためには
弁護士 尾畠弘典
自分の住んでいる町の財政状況をチェックするためには。
地方財政健全化法に定められた指標が参考となる。
1 地方財政健全化法
地方財政の健全化については、「地方分権21世紀ビジョン懇談会報告書」(平成18年7月3日)、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18年7月7日閣議決定)及び「新しい地方財政再生制度研究会報告書」(平成18年12月8日)において、財政情報の開示や早期是正機能がない等の従前の制度上の課題が指摘され、財政指標を整備してその公表の仕組みを設けるとともに財政の早期健全化及び再生のための新たな制度を整備することが検討された。
その結果、平成19年6月、従前の制度の根拠法であった地方財政再建促進特別措置法(昭和30年法律195号)に取って代わり、地方公共団体の財政の健全化に関する法律(平成19年法律94号。以下「地方財政健全化法」という)が成立し、同月に公布された。
2 財政指標とは
地方公共団体の長は、毎年度、前年度の決算の提出を受けた後、速やかに、以下の比率及びその算定の基礎となる事項を記載した書類を監査委員の審査に付し、その意見を付けてこれらの比率を議会に報告し、かつ、公表しなければならない(地方財政健全化法3条1項、22条1項)。
(1)実質赤字比率
一般会計等を対象とした実質赤字額の標準財政規模に対する比率。
(2)連結実質赤字比率
公営企業会計を含む全会計を対象とした実質赤字額及び資金の不足額の標準財政規模に対する比率。
(3)実質公債費比率
一般会計等が負担する元利償還金及び準元利償還金の標準財政規模を基本とした額に対する比率。
(4)将来負担比率
地方公社や損失補償を行っている出資法人等に係るもの、第三セクター等に対する短期貸付金、不動産の信託に係る負債など、一般会計等が将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模を基本とした額に対する比率。
(5)資金不足比率
公営企業会計ごとの資金の不足額の事業の規模に対する比率。
3 おわりに
各自治体の財政状態(決算、監査委員の決算審査意見書等)は、上記の財政指標と同様、広報紙やホームページなどで公表されている。
まずは上記の財政指標を足がかりとして、これらの資料を読み込んでいくことで、効率的に財政状況を把握、検討していくことが可能となる。