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2016.08.10 選挙

【フォーカス!】東京都知事選

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

圧勝の裏にあるしたたかな勝負勘

  7月31日投開票の東京都知事選挙で、元防衛相の小池百合子氏が初当選し、東京では初の女性知事が誕生した。得票数が291万票と、次点だった元総務相、増田寛也氏の179万票、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏の135万票を大幅に上回る圧勝となった。
 都知事選の争点は、2020年の東京五輪・パラリンピックの成功、待機児童の解消、急増する高齢者の介護体制の整備、首都直下地震への備などだったが、主要3候補とも前向きな姿勢を示しており、主張に大きな違いは感じられなかった。
 その中で小池氏が選ばれたのは、政策でははく、政治家としての魅力が、他の候補よりも1枚も2枚も上手だったことに尽きる。つまり、どうすればメディア、そして都民の注目を集めるのかを熟知し、そのシナリオに乗って演じきったということだ。
 小池氏は、小泉純一郎首相時代、郵政民営化に反対する候補のいる東京10区に、刺客として立候補し当選した経験がある。ここで人心の掌握術を学んだと考えられる。
 小池氏は、自民党の了解を得ないまま増田、鳥越の3人の中では、異例の「早出しじゃんけん」で一番早く出馬を表明した。むろん勝てる候補しか出ないと読み切ってのことだ。次に「東京大改革」「都議会を冒頭解散する」といったキャッチ―な公約を掲げ、都議会の自民党、自民党の東京都連を仮想敵にして自らを改革者として強く印象付けた。
 特に都連から「小池氏を支援した者は親族に至るまで処分する」といった時代錯誤的な文書が出されたことで、政党からいじめられる可哀想な存在に自分を仕立て上げ、都民の「判官びいき」に火を付けたといえる。石原慎太郎元知事の「厚化粧の女」発言も含めて、敵失で得点を稼いだということだ。劇場型の演出による都民へのアピールは抜群にうまかった。
 だが、8月2日に都知事に就任した後は、安全運転に徹している。自民や公明、民進、共産といった既成政党が推した候補を破ったため、都議会の大多数が野党になるのは確実であり、完全アウェーで都政をスタートすることを考えれば当然だろう。
 都議会の冒頭解散も記者会見では明言しなかった。といって議会側も、110万票以上の差でトップ当選した圧倒的な人気のある知事に、今の時点でガチンコ勝負には出たくない。来年夏の都議選もにらみながら、知事がどのような政策を出して来るのか、議会との関係をどうつくろうとするのか、様子見というのが現実的な方策だろう。
 テレビも新聞も小池知事の一挙手一投足に注目している。だが、かつての長野県の田中康夫知事が出した「脱ダム宣言」、そして今は弁護士に専念する橋下徹氏が大阪府知事・大阪市長時代に提唱した「大阪都構想」はいずれも失敗に終わっている。
 つまり、議会との協力体制、そして都民の圧倒的な支持がなければ大改革を成し遂げることが難しい証拠である。
 7月末に開かれた全国知事会議の記者会見で、知事会の会長である山田啓二京都府知事は「東京と地方の共存の中で未来を探るような都政をやってほしい」と注文を付けた。少子・超高齢社会の中で、若者を全国から吸い上げる東京一極集中の加速もあり、東京の在り方が問われている。つまり、地方創生の観点からも小池知事の対応には目が離せない。
 

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