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2016.07.14 選挙

【選挙プランナーのサクセス情報】サミット直後の参院選は予想どおり「与党圧勝」で幕引き

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選挙プランナー/アスク株式会社代表取締役社長 三浦博史

参院選各党議席確定

 7月10日投開票の参議院議員選挙は、自民党56議席(追加公認を含む)、公明党14議席の計70議席を獲得し、安倍総理が勝敗ラインとして設定した与党の改選過半数(61議席)を大きく上回り、与党の圧勝(野党計51議席)に終わった。
 自民党は27年ぶりの単独過半数となる57議席にはあと1議席届かなかったものの、選挙区で37議席、比例代表でも前回(2013年)参院選を1議席上回る19議席を獲得した。しかし、当初から苦戦が伝えられていた福島と沖縄で現職閣僚2人が落選するなど、完勝とはならなかった。同じく、与党の公明党は選挙区に過去最多の7人を擁立し全員当選。比例の7人と合わせ、改選の9議席を大きく上回る14議席を獲得し、ほぼ完勝といえよう。おおさか維新の会も改選の2議席から7議席へと大きく躍進した。
 一方、野党第一党の民進党は、前回参院選(当時は民主党)の17議席を上回り、32議席を獲得したものの、改選議席からは大きく減らした。共産党は改選の3議席から倍増の6議席とはなったものの、当初掲げた比例での獲得目標9議席は、同党の藤野保史政策委員長のテレビ番組内での発言の影響から、選挙戦終盤での頭打ちの最大要因となり、前回の8議席にも及ばず、同党が期待したほどの躍進にはつながらなかった。
 社民党は比例代表で1議席を獲得したが、党首の吉田忠智氏が落選、生活の党は比例代表で残る最後の1議席を獲得、在籍する無所属候補2人が当選したため、何とか政党要件をクリアできる見通しとなった。

投票率はわずかに上昇も、過去4番目の低水準に

 公職選挙法の改正で、駅や商業施設など、利便性の高い場所への「共通投票所」の設置や、期日前投票の投票時間の拡大、人口が少ない隣接区を統合する「合区」、そして選挙権年齢の「18歳以上」への引下げなどが導入された初の国政選挙となったわけだが、期待された投票率(選挙区)は54.70%と、前回参院選より2.09ポイント上昇したものの、過去4番目の低水準に終わった(比例代表は54.69%で2.08ポイント上昇)。
 これは、ショッピングセンター等への期日前投票所の設置数は増えたものの、全国で162か所とまだまだ少なく、同時に大半の期日前投票所での投票時間が従来と変わらなかったことなども伸び悩みの一因として挙げられよう。
 そうした中で、前回に比べ特に投票率が上昇したのが、前回、全国最低だった青森県(前回比9.06ポイント上昇)や、長野県(前回比5.14ポイント上昇)、大分県(前回比5.23ポイント上昇)などの大接戦となった選挙区だ。特に青森県については、わずか8,052票差という大激戦と、期日前投票所を増やすなどの各自治体の取組が功を奏したものと思われる。反対に、今回から「合区」となった徳島・高知選挙区では、候補者が出なかった高知での無効投票率が前回の1.7倍に上ったり、同じく「合区」となった高知県、鳥取県、徳島県で投票率が低下する(合区対象県では島根県のみ上昇)など、問題点も出てきた。
 期日前投票については、今回投票者数が1,598万人(全有権者の15%が利用)と、過去最多となり、2003年12月に施行されたこの制度が有権者にかなり浸透した結果と思われる。

「18歳選挙権」について考える

 今回の参院選で一番話題となった「18歳選挙権」については、正式な年代別投票率がまだ公表されておらず評価は難しいものの、11日に総務省が発表した18歳・19歳の投票率調査(抽出調査・選挙区)の結果は45.45%で、全体の投票率の54.70%より9.25ポイント低かった。18歳と19歳とを分けて見ると、高校などで「主権者教育」を受ける機会の多い18歳(51.17%)の方が、大学生や社会人の多い19歳(39.66%)よりも11.51ポイントも高い。
 これだけを見ると、低いと捉えがちだが、少なくとも、これまで過去5回の参院選で20歳の投票率は30%台前半にとどまっていることを考えると、「18歳選挙権」がメディアでも多く取り上げられ注目されたこと、各高校で選管による出前授業や模擬投票といった取組が行われたことが、18歳・19歳の新有権者の投票行動に大きな影響を与え、相応の効果があったことは間違いない。こうした取組を継続的に行っていくことが今後の成果につながってくるものと思われる。
 ただ、それ以上に問題として捉えるべきは、低投票率を問題視する声が高まっている中で、全有権者の半数近くが投票に行かない現状だ。こうした状況では18歳・19歳にだけ政治への関心を持たせることは難しいのではないだろうか。
 また、今回、住民票を実家に残したまま離れて暮らす学生らが選挙人名簿から外され投票できない問題が明らかになったが、改めて、「有権者目線」での公職選挙法等の制度の見直しを図る必要があることを実感した。

参院選の主なトピックス

 今回の参院選は、伊勢志摩サミット、そしてオバマ大統領の広島訪問直後で、安倍内閣の内閣支持率が上昇したところでの選挙戦となったわけだが、序盤戦から「与党優勢」といわれ、終盤戦に入っても何ひとつ「サプライズ」もなく、そのまま投票日を迎えた感がある。
 そうした中、今回、32ある「一人区」での戦いが注目され、すべてで「自公」対「野党統一候補」というガチンコ勝負となったが、青森、福島、新潟、山梨、三重、大分は、一票を争う大激戦となった。その結果、自民党の21勝11敗に終わったが、個々の選挙区事情は別としても、自民党の東北での劣勢(自民は東北6県中5県で落選)が印象深い。
 また、今回、与党側に大きなミスらしいミスは見当たらなかったものの、野党側には失言が目立った。特に前述の共産党・藤野氏の発言や、民進党の岡田代表が地元三重選挙区の応援演説中に言った、「(地元で)落とすようなら、次の代表選に出ない」という発言は大きな波紋を呼んだ。

参院選直後の東京都知事選

 最後に、参院選終了直後の14日に告示された、首都決戦・東京都知事選挙について触れておこう。
 実質的に、自民・公明推薦の元総務大臣・増田寛也氏と、自民党衆議院議員の小池百合子氏、そして告示直前に出馬が決まった野党統一候補のジャーナリスト・鳥越俊太郎氏の3氏による戦い。
 今回、都民は何を一番の判断材料にするのか? 「知名度」や「パフォーマンス」ではなさそうな気がする。アメリカ大統領選挙ではトランプ氏(70歳)とヒラリー氏(68歳)という高齢対決となっているが、76歳の鳥越氏はさらにその上をいくわけで、健康状態と年齢が大きな不安材料のひとつとなりそうだ。「都議会冒頭解散」を宣言した小池氏は“劇場型選挙”とも揶揄(やゆ)される。堅実路線ということでは増田氏に軍配が上がりそうだが、知名度を短期間でどう高められるかが鍵。
 候補者の掲げる政策はもちろん重要だが、まずは都政に対する信頼を取り戻すこと、さらには、あと4年と迫った東京オリンピック・パラリンピックに向けた、堅実な都政運営が求められているのではないだろうか。

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