2023.10.11 仕事術
第9回 どうする決算審査②
元所沢市議会議員 木田 弥
前回、1年目の議員は、決算審査の委員会は遠慮した方がいいとお伝えしたところでした。ちなみに私の古巣の市議会の今年度の委員に、新人議員は2人が就任。1人は1人会派で、1人は政党会派。教育的な配慮やそれ以外にも様々な事情があるのでしょうが、十分な審査が行えるか疑問が残るところです。私も試みて失敗したのですが、本来であれば議会として、会派を超えてしっかりとした新人議員育成のためのプログラムを作成し、無理なく議員として必要な技量が身につくように人事的にも配慮する必要があります。会派の壁もあってそれがかなわなかったこともあり、この連載を通じて少しでも新人議員の皆さんに地方議会の歩き方をお伝えしたいと思っています。
時期的には、少し遅きに失した感もありますが、今回の記事を参考にして、新人議員の皆さんも、ベテラン議員に負けない決算審査を行ってください。
まずは前年度の決算審査議事録の確認から
我が市議会の場合、前回もお話ししたとおり、決算特別委員会委員の当番が回ってくるのは、ほぼ4年に1回です。ですから、毎回、どんな手順で決算審査を実施していたか、私もすっかり忘れてしまっていました。
そこで、特別委員会開会までに、まず取り組んだのが、前年度の決算に関する委員会の議事録のチェックです。議事録を読むと分かるのですが、問題点を鋭く追及する質問もありますが、政策のお勉強が目的ではないかと思うような質問や、議員本人はあまり質問したくないけれど、会派の都合で必ず聞くことになっている質問もあります。そのため、同時に、決算特別委員会の委員長報告議事録を確認しました。こちらの方が、お勉強的な質問やお決まりの質問が報告から除かれており、より論点がはっきり見渡せます。また、決算に関する委員会の議事録も、できれば2年分を確認すると、お決まりで質問される定番質問項目が確認できます。
特に、初めて決算審査に臨む場合は、自分の関心のあるテーマについてどういった議論がなされているか、決算に関する委員会の議事録で確認するとよいでしょう。ほとんど説明がなく数字しか羅列されていない決算書や分厚い事項別明細書に食らいつく前に、議事録を確認しておけば、自分の感心のあるテーマに関してどのような質問があったか、あるいはなかったかが確認できます。
また、対象年度の予算に関する議事録も、余力があれば確認しておくとよいでしょう。予算審議に当たって何が争点になっていたかを把握し、その争点になった項目の決算がどうなっているかを確認することは重要です。案外、予算審議のときには大いに盛り上がっていた争点が、決算審査では全く触れられないこともままあります。
私の場合は、予算で執拗(しつよう)に食らいついた項目や、あるいは反対した項目については、自分が決算審査の委員会に所属していれば自分が、そうでない場合は、決算審査の委員会に所属している同僚議員に、どのような予算の使われ方をしたかを聞いてもらうことにしていました。
以上の議事録は、比較的容易に入手可能です。可能ならば、議会に提案される前の監査委員の決算監査議事録を入手するとよいでしょう。しかし、この議事録の入手は、監査委員の守秘義務規定に抵触する可能性ありとして、すんなりとは入手できません。私も、決算特別委員会の全委員が決算監査議事録に目を通しておいた方がよいと考え、議会事務局を通じて資料を要求したことがあります。しかし、監査事務局からやんわり拒否されました。仕方がないので、情報公開請求制度での公開を請求して資料を確保し、全委員に配付したこともあります。原則、この方法を用いれば、誰でも議事録を入手することができるはずです。もし、守秘義務に触れる部分があれば、黒塗り箇所があるのですが、そのときは、黒塗り箇所はありませんでした。
理想は、こんな手間をかけなくても、議員選出監査委員が、決算審査に入るまでに監査委員による議論の論点を報告することです。そうした議会の事例もいくつか出てきているようです。
監査委員の議事録のメリットは、質問内容を確認することで未執行の予算が発見しやすいことにあります。我が市の場合、監査事務局が決算監査に当たって、監査委員向けに資料を作成しますが、未執行予算をリストアップしてあるため、決算監査で未執行予算について監査委員が質問した場合、議事録に掲載され、それによって未執行予算の存在を確認できます。決算監査では、特に額が大きい未執行予算については質疑で取り上げられている可能性が高いです。
もちろん、後述するように、予算書と決算書を丁寧に見比べれば未執行予算を見つけることはできるのですが、分厚い資料を見比べるのは手間ですし、予算書の形式と決算書の形式が微妙に異なっていることもあり、見つけるのは骨が折れる作業です。
監査委員の決算監査では、すべての未執行予算がリストアップされます。もし会派から議会選出監査委員が出ていれば、そのリストの内容を教えてもらうこともできます。
ただ、先ほども述べたとおり、監査委員には守秘義務が課せられているので、教えることが違法であるという見方をされることもあります。一方で、この守秘義務は、個人の滞納情報などでなければ、それほど深刻に捉えることはないという見方もあります。実際問題としてなかなかすんなり提供してもらえない理由は、守秘義務というより、監査委員の情報が議員に漏れてしまうと当然ながら執行部としては痛いところを突かれてしまうので、できれば遠慮してほしいということなのでしょう。