2023.07.25 医療・福祉
第1回 次期法改正、包括センター機能の一部をケアマネへ委託することへの懸念
主任介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士/杉並区地域包括支援センター管理者 本間清文
介護保険法改正と地域包括支援センター
介護保険法の改正を含む「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が2023年5月12日に成立し、5月19日に公布されました。
介護保険関係の主な改正事項は次のとおりです。
Ⅰ.介護情報基盤の整備
Ⅱ.介護サービス事業者の財務状況等の見える化
Ⅲ.介護サービス事業所等における生産性の向上に資する取組に係る努力義務
Ⅳ.看護小規模多機能型居宅介護のサービス内容の明確化
Ⅴ.地域包括支援センターの体制整備等
上記のうち、市民にとって介護保険相談の入り口でもあり、筆者の従事先でもある地域包括支援センター(以下「包括センター」といいます)のあり方に大きく影響する内容が「Ⅴ」にあります。
改正の趣旨・概要としては、「地域住民の複雑化・複合化したニーズへの対応、認知症高齢者の家族を含めた家族介護者支援の充実など、地域の拠点である地域包括支援センターへの期待や業務は増大」する一方であるため、包括センターの機能の一部である介護予防ケアプラン作成や総合相談を居宅介護支援事業(ケアマネ事業所)も請け負うことができるようにするということです。
この改正内容のうち「総合相談」のケアマネ事業所への委託について、筆者は大きな懸念を抱いており、高齢者虐待などが増加するのではないかと案じています。その理由を以下に示したいと思います。
総合相談の例
例えば、市民から「高齢者と息子の同居世帯の家から、毎晩、息子の怒鳴り声が聞こえるので高齢者虐待ではないかと心配です」といった相談が包括センターに舞い込むことは珍しいことではありません。そして、その怒鳴り声の原因が、親の介護に伴う負担であり、それを介護保険サービスで取り除くことができるなら、ケアマネジャーが相談に乗ることで問題は解決するかもしれません。
しかし、世帯の問題というのは十人十色であり、怒鳴り声の原因は介護とは関係ないかもしれません。例えば、高齢の親は元気だが、息子の方に精神疾患があるようなケースがあるとしましょう。
そこでは、息子は自分の服薬管理が不十分で、怒鳴り声を上げているかもしれません(そして、「8050」問題がクローズアップされているように、こうしたケースは珍しくありません)。