2023.07.10 仕事術
第4回 どうする議長選②
元所沢市議会議員 木田 弥
前回、「何か(議会)を変えようとするときに大事なのが、人事です」とお伝えしました。特に、議長選挙は重要です。後ほど述べるように、「議長選出権力」が議会内では最も強い権力の一つだからです。
今回は、議長選挙をめぐって定例会が自然閉会になるほどもめた事例を紹介します。この人事抗争(あえて抗争と表現します)を経て、我が市議会は変曲点(トレンドが変化する点)を迎えたといってよいでしょう。私から見れば、この変曲点が、我が市議会にその後、大きな変化(議会の権限が詰まった2階への階段を造作≒議会基本条例の制定などが可能になった)をもたらしたと思っていますが、別の視点の方からすれば、あれ以来、我が市議会は秩序が乱れてしまった、という意見もあるようです。そして、私が1期生ながらも、議会内で一定の評価(?)を獲得したのも、この抗争からといってよいでしょう。
2005年第2回定例会が何も議決せず自然閉会に
手元に、我が市議会の2005年第1回(6月)臨時会をまとめた「市議会だより」(以下「だより」といいます)のコピーがあります。
この号には、臨時会で新しく議長、副議長になった2人の議員の写真と、議長、副議長より少し小さいサイズで2人の監査委員の写真が、何事もなかったかのような笑顔で掲載されています。
今回、抗争の舞台となり、自然閉会となった2005年第2回(6月)定例会については「だより」が発行されなかったため、2005年第1回(6月)臨時会の「だより」で、同定例会について簡単に解説されています。
「第2回定例会は、6月10日に開会されましたが、自然閉会となったため1日で終了しました。この定例会で審議する予定だった議案は6月21日から開催された第1回臨時会で審議しました。」
ちなみに、臨時会の場合、議案審議に伴う議案質疑のみが実施され、一般質問は行われないため、私を含め、同定例会で一般質問を予定していた議員は、一般質問の貴重な機会を1回失いました。
さらに「だより」には、「自然閉会とは……議会の活動は、まず会期・日程を決定することから始まります。このため、会期・日程の決定をしないで午後12時になると自動的に閉会となります。これを自然閉会といいます」とも解説されています。
おそらく、この解説では、事情を知らないほとんどの住民の方には全く理解不能だったことでしょう。「なぜ、初日に会期・日程の決定ができなかったのか」が説明されていないからです。
実態としては、この第2回定例会を取り仕切っていた全国規模の中道政党の会派に属するA議長が、途中から会派の部屋に立てこもって午後12時まで出てこなかったために、議会が再開されずに自然閉会となりました。
本来であれば、A議長は議会開会中、議長室に陣取るのが基本です。正直、ここまでするのか、と当時は思いました。それほど、対立陣営は、私たちが候補とした人物(B議員)を議長にさせたくなかったということでしょう。そして、この対立陣営の背後に見え隠れしていたのが、執行部の権力中枢です。というのも、午後12時まで議長が議会を開会しなければ自然閉会になるということを知っているのは、議会のルールに相当詳しい人物です。議員たちもなぜ出てこないのかと、当初はいぶかしがり、この自然閉会のシナリオが見えませんでした。シナリオを描けるのは、例えば、かつて議会事務局を経験したことがあるなど、よほど議会の議事運営について詳しい人物です。残念ながら議員がシナリオを書けたとは到底思えません。あくまでも私の憶測ですが。
議長が会派の部屋に立てこもって出てこないことに怒ったある議員が、「議長出てこい」と会派の扉を蹴ったため、今もその会派の扉には、かすかにへこみがあります。
議会改革の視察に来られた他市町村議会の方から、「なぜ議会改革を進めることができたのか? そのきっかけは?」とよく問われました。本当に熱心な議会の方には、「2005年度の議長選挙をめぐる抗争が一つのきっかけ」であること、その際に、会派の扉にへこみができたことを説明し、そのへこみをご覧いただくこともありました。