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2016.03.25 仕事術

第13回 視察後は「視察報告書」としてまとめる

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一般財団法人地域開発研究所 牧瀬稔

まずは「視察概要」としてまとめよう

 視察は「行けば終わり」ではいけない。視察後は「視察報告書」という形にまとめて提示することにより、“他人満足”も追求しなくてはいけない。そのため視察が終了したら、視察報告書として成果をまとめる必要があるだろう。ちなみに、行けば終わりは“観光”である。観光は自己満足が中心であるため、必ずしも報告書としてまとめる必要はない。ここに視察と観光の違いがある。
 筆者は視察を実施したときには、必ず視察報告書を作成している。この報告書は2つの要素から構成している。第1部は「視察概要」である。概要とは「全体の要点を取りまとめたもの」という意味がある。そのため視察概要は簡単に数枚くらいでまとめている。また、視察概要は誰が読んでも理解できるようにという点を特に意識して作成している。
 視察の成果を書き込む基本的な文章の作法は、次回以降、本連載において言及するが、今回は文章の作成において、特に重要な観点を1点だけ紹介しておく。それは「一文は短くする」ことである。一文を短くすることにより、主語と述語が近くなる。その結果、文章は理解されやすくなる。筆者は、原則一文は80字以内にしている。筆者が文章を作成するときは、40字×40行で作成しているため、一文が3行以上にならないようにしている。なお、市販されている文章の書き方に関する図書は「一文100字以内」と指摘することが多い。
 視察から得られた知見を他人に説明するのは、文章とプレゼンテーションしかない(議員におけるプレゼンテーションのひとつが議会質問である)。その意味では、文章力とプレゼンテーション力は磨いておいた方がよいだろう(筆者は、文章力はまあまああると自認している。しかしプレゼンテーション力はまだまだ足りないと思っている)。
 いい文章の定義は簡単である。それは「一読して理解される文章」である。一読してすぐに理解できない場合や、解釈が分かれる場合は悪い文章といえる。これは条例の条文規定にもいえる。ひとつの条文規定の解釈が分かれてしまう場合は、いい条例とはいえない。
 本連載の読者は議員が中心と思われる。条文規定の作成に限らず、文章を検討するときは「一読して理解できる」という点を考慮してほしい。いい文章にするためには、文章を作成したら、必ず第三者に読んでもらい、意見をもらうといいだろう。

次に「資料」も用意しよう

 視察報告書の第2部は「資料」という位置付けである。具体的には、①視察先からいただいた資料を加える。②視察中に写真撮影した場合は、その写真を掲載する。視察先からいただいた資料や写真を視察報告書に使用する場合は、事前に視察先に対して掲載許諾をとっておく必要があるだろう。また口頭で掲載許諾を得るのではなく、メール等で文章として残しておく方が無難である。口頭のみの確認では「言った」や「言わなかった」という経緯からもめる場合がたまにある。
 議員が政務活動費を活用せず、個人という私的な立場として視察に行った場合は、必ずしも議会に報告する必要がないだろう。そのため視察報告書は公開されることがない(ただ、議員は個人という立場で視察に行っても、視察を受け入れる側は「公的立場で視察に来た」と思っていることが多い)。しかし、議員が議会活動の一環として公的な立場で視察に行ったとき(例えば委員会の活動として視察に行く)や、政務活動費を活用して視察した場合は、議会に報告する義務が生じる。議会に報告されると、原則として公開の対象となるため、視察先に対してしっかりと資料や写真の取扱承諾(公開を前提とした掲載許可等)をとっておく必要がある。
 話は変わるが、筆者は様々な審議会に委員として参加している。この審議会とは条例を根拠として設置される附属機関である。審議会における筆者の見解は、後日議事録となり全て公開される。筆者が審議会を欠席するときは、見解をレジメとしてまとめて事務局に提出することがある。そのレジメも公開される。
 以前、ある審議会において問題提起の意味を込めて極論を述べたことがあった。その極論が議事録に掲載されホームページで公開された。すると、その議事録を読んだ住民から筆者に対してクレームが届いた。筆者が全く面識のない住民である。こういう経験は過去数回ある。このような状況が頻繁にあると、なかなか審議会において独自の意見がいえなくなってしまう。その意味で審議会を全面公開することに、最近は少し疑問を感じつつある。いや、審議会を全面公開することは必要であるが、審議会後の議事録を全て公開することに違和感がある。審議会後の議事録は全て書き込むのではなく、発言要旨だけにしたり、発言者の氏名は書き込まなくてもいいような気がしている。
 話は視察報告書の資料に戻る。本連載で紹介した10の質問に対する視察先からの回答を記述した文書も用意している。もちろん、紹介した10の質問に限らず、質問した内容や得られた回答は、全てデータ化して記録として残しておくとよい。また、視察対応者からいただいた名刺のコピーも資料として付けている。視察報告書の中に名刺を張り付けることも、事前に承諾をとっておいた方がよいと思われる。

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