2023.04.25 ICT活用・DX
第8回 国の思惑どおりに普及しない介護ロボットの問題点
社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員/杉並区地域包括支援センター管理者
本間清文
トメ 妹のヨネが「夫をデイサービスに行かせたいのに、ケアマネジャーが見つからない」と困っておったぞ。
相談員 それは困りましたね。以前にもお伝えしたように、ケアマネジャーの不足については警鐘を鳴らしています(本間 2021)。しかし、その問題に対して、どこかの自治体が何か対策を行ったというニュースは聞いたことがありません。その一方で、ケアマネが足りないという情報は私の周辺でも目立ってきており、ケアマネ不足問題が表面化しつつあると感じています。
トメ そうなると、在宅介護は諦めて施設へ入ってもらうしかないのかね……。
相談員 入れる施設があればですが……。
トメ 施設は在宅よりお金がかかりそうだもんね……。
相談員 お金があっても、入れない理由として、介護職員不足というのも珍しくないんですよ。
トメ そういえば、最近、近所に大きな特養ホーム(特別養護老人ホーム)ができたのに、すぐには受け入れてくれないといううわさを耳にしたぞ。もしかして、介護職員不足が関係しておるのか?
相談員 もしかしたら、そうかもしれません……。
トメ 以前、介護職員不足を補う介護ロボットのニュースを見たが、進んでいないのか?
相談員 それでは、今回は介護ロボットのお話をさせていただきます……。
普及には程遠い介護ロボット
厚生労働省が現在、ロボットの定義としているのは、①センサー系、②知能・制御系、③駆動系の3要素を有する、知能化した機械システムです。具体的には、見守りセンサーや自動排泄処理装置、高齢者を抱きかかえるときなどに使う装着型パワーアシスト等が中心です。介護ロボットというと鉄腕アトムのような人型ロボットを想像しがちですが、もちろん、そのような高度なものはまだ開発されていません。
平成30年度改正より、介護ロボットとして見守り機器を導入した場合の加算や夜勤職員の配置加算を緩和するルールも設けられました。さらに、令和3年度改正ではテコ入れを図るため、要件の緩和なども行われました。
しかし、結果は惨憺(さんたん)たるものとなりました。6年近くかけて普及を図ってきましたが、全くといっていいほど結果に結びついていないのです。
図1が、来年度の報酬改定に向けて行われた報告書(厚生労働省 2023)の一部です。ご覧のとおり、見守り支援機器の「30%」が最大値であり、普及には程遠い結果です。
出典:厚生労働省「第215回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」
図1 介護ロボットの導入概況
介護ロボットを活用していない理由について同報告書では、「『導入費用が高額』が最も多く、次いで『導入する必要のある課題や必要性を感じていない』や『導入した機器を職員が使いこなせるか不安がある』が多く挙げられた」としています。
また、介護ロボット等のテクノロジー活用を要件として創設された加算の算定状況についても、「夜勤職員配置加算、夜間の人員配置基準、日常生活継続支援加算・入居継続支援加算について調査を行ったところ、算定率は、いずれも1割に満たない結果であった」として算定率の低さを指摘しています。