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2016.01.15 条例

第24回 条例の言葉遣いは法律どおりでないといけないのか

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議会事務局実務研究会 吉田利宏

■お悩み(言葉も大事さん 50代)
 市議会事務局の課長です。うちの議会でも、ようやく、いくつか議員提案条例の動きが出てきました。ところが、条例案の言葉遣いにこだわりのある議員が1人いらして困っています。「『空き家』は法律どおり『空家』でないとダメだ」、「『子供、障害者』は、『こども、障がい者』と表記すべきだ」などと主張して、そのことで調整が紛糾することもしばしばです。市の公文書の言葉遣いと必ずしも一致しない点もあるようですが、事務局としてはどのように対応すればよいのでしょうか?

回答案
A その自治体の条例の用字・用語の基準をベースに作成すべきだが、議会で意図して別な用字・用語を使うなら、それを尊重すべき場合もある。
B 用字・用語などは議会で自由に決めればよい。それも条例の一部であるので事務局としては意見をいうべきではない。
C 用字・用語は内閣法制局が決めた基準がある。自治体といえどもこの基準に従うべきであることを意見しなければならない。

お悩みへのアプローチ

 「神は細部に宿る」などといいますから、条例の言葉遣いだって粗末にできません。しかし、ときには自分流のこだわりを他人に押しつける人もあるものです。「早く鶏肉を入れて! だめだめ、豆腐はそのタイミングで入れちゃダメ!」。鍋奉行のご託宣なら、こだわりがある人に任せておけばいいのですが、条例の場合はそうもいきません。
 条例での言葉遣いを考える前に、まずは法律(国)での扱いを確認しておきましょう。
 国の公用文の用字・用語の基準として「公用文における漢字使用等について(平成22年11月30日付け内閣訓令第1号)」があります。この訓令は、新しい常用漢字表の告示に併せて出されました。「訓令」というのは行政内部の命令のことです。政府の職員はこの基準に従い公用文を作成する義務があります。さらに法令については「法令における漢字使用等について(平成22年11月30日付け内閣法制局長官決定)」というルールがあります。内閣法制局の権限が及び得る範囲で、法令はこの基準に従って作成されます。具体的には、内閣法制局が審査する内閣提出法案、政令案、条約案が対象となります(内閣法制局設置法3条)。逆にいえば、省令には及びませんし、議員提出法案に効力を及ぼすものでもありません。ただ、省令の用字・用語が法律や政令と異なるのはおかしいことです。また、議員提出かどうかで法律の用字・用語が異なるのもなかなか理屈になりません。そのため、事実上、国の法令は、内閣法制局長官決定に従った用字・用語がなされている現状があります。
 さて、ここまで踏まえて、自治体での用字・用語の基準です。
 公用文規程といった訓令であったり、訓令ではない規程だったり、規則であったり、職員向けの通知であったりと、その根拠の形式はいろいろですが、多くの自治体で公用文や例規の用字・用語の基準が明らかにされています。また、その内容も、次の静岡市のように国の告示や訓令を引用しているところもあれば、独自にその内容を書き起こしているところもあります。ただ、その基準は、ほぼ国に準じたものとなっています。

○静岡市公文例規程(平成15年訓令第6号)
 (用字及び用語)
第3条 公文書に用いる漢字、仮名遣い及び仮名については、それぞれ次の基準による。
 (1) 常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)
 (2) 現代仮名遣い(昭和61年内閣告示第1号)
 (3) 送り仮名の付け方(昭和48年内閣告示第2号)
 (4) 外来語の表記(平成3年内閣告示第2号)
 (5) 公用文における漢字使用等について(平成22年内閣訓令第1号)
 (6) 法令における漢字使用等について(平成22年内閣法制局総総第208号)

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