2022.11.25 住民参加
【セミナーレポート】「地方議会活性化シンポジウム2022」地方議会をより開かれたものへ~多様な人材の参画に向けた取組~
2022年11月11日(金)、「地方議会活性化シンポジウム」が、今年は対面とオンライン併用で開催されました。「地方議会をより開かれたものへ~多様な人材の参画に向けた取組~」をテーマに、基調講演およびパネルディスカッションが行われましたので、その様子をレポートします。
人口減少社会から見える課題
最初に、勢一智子氏(西南学院大学法学部教授)による「多様な人材が参画する地方議会の実現に向けて」と題する基調講演が行われました。
勢一氏は、今後、地域の諸課題と対峙するためにも、多様な民意を反映する地方議会が重要となっていることを説き、それを阻む課題として、人口減少社会、議員のなり手不足、投票率の低下、無投票当選の増加などがあげられました。
人口減少社会から見えてくる課題としては、地域差が大きいこと、また2040年には団塊世代は健在の上、団塊ジュニアが高齢者層に入るが、それを支える生産人口年齢層が少ないといった、世代構成が異なっていることも指摘しました。
また、投票率については、年代別にみると特に若年層の投票率が低い傾向があり、人数の少ない世代がさらに投票率が低いことで、若い世代が望む地域の形が地方議会には届けられていないのではないか、との課題もあげられました。
地方議会の運営の実態と投票率の低下
その他、地方議会の運営の実態について、地方議会といっても形は様々であり、それぞれで多様性ゆえのミッションを考えていかなければならないこと、また、地方分権が進んで、議会が決めていくことが増えているにもかかわらず人数が絞られているので、質が重要になっていることなど、さまざまなデータからみた分析の紹介がありました。
また、議会に求められることが多様になっているにもかかわらず、投票率が下がっているのが現状であり、さらに議員の職業別のデータを見ると、多様な人材が議会を構成しているとはいえない状況であるとの指摘がありました。さらに、女性比率、議員の平均年齢が高い団体は無投票となった団体に多く、多様性が十分に生かされていない議会との相関性にも言及がありました。
女性議員を増やす取組
女性議員を増やすべきという取組は長らく進められており、H31年統一地方選では、当選者に占める女性の割合は過去最高となったことは、これまでの取組が実を結んでいると言えますが、議会によって3割~1割といった差が生じていることや、国際比較を見ると146か国中116位と、諸外国に比べるとまだ少ないことが課題となっています。諸外国では、1975年から始まったジェンダークォータ―制度などの効果が出ていると思われるため、日本でも、これまでの取り組みを加速し多様な人材の参画を実現するために、今回のような議論を契機として導入を考えていくべきではないか、との話がありました。
DX時代の議会
多様な人材の参画を前提とするような議会運営のため、これまで取り組まれてきたこと(会議規則における育児介護等の取扱いの明確化、ハラスメント防止、参加しやすい会議日程の設定等)や、住民に開かれた議会のための取組(模擬公聴会や少年議会など)、またデジタルを活用した情報発信の多様化などの事例を紹介いただいたほか、デジタルについては、大学でのオンライン授業や小学校の授業など、若い世代では定着してきていることから、今後新しい社会での議会であり方に、特に情報発信の手段として処方箋のうちの一つになるのではとの話がありました。
第33次地方制度調査会では、10月24日に「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」の素案が報告されており、これからの展望に期待を寄せたいとのことでした。