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2022.04.25 医療・福祉

第4回 ケアプランの有料化がはらむ問題点

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社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員/杉並区地域包括支援センター管理者 本間清文

 トメさんは、やや精神疾患を持つ老人で、都会で一人暮らしをしています。都会に出てきたのは、田舎での人間付き合いが嫌だったからです。都会でも、ほとんど人付き合いをせず、ひっそりと暮らしてきました。しかし、加齢とともに認知症も混ざってきて、生活に支障が出てきました。家の中には、捨てられない生活ごみ、コンビニなどの包装パッケージの空箱やビニール袋、山積みになった衣類などが散乱し、足の踏み場もありません。いわゆる「ごみ屋敷」です。認知症の程度から見て、明らかに介護認定は下りそうです。そこで、地域包括支援センターの職員がトメさんの家を訪問しました。

慎重かつ丁寧な介入が必要な福祉的ケース

 

地域包括支援センター職員(以下「職員」) (ドアチャイム)ピンポーン。
トメ (インターホンから)どなた……?
職員 市の地域包括支援センターの浦川といいます。こんにちは。地域の高齢者を訪問して回っています。
トメ 市役所が何の用ですか……?
職員 掃除やごみ捨てとか、お困りのことはないかなと思いまして。
トメ うちは、特に困ってません、大丈夫ですよ、ご苦労さまでした。
職員 あっ! 掃除だけに限らず、物忘れや認知症の相談なんかにも乗っていますが。
トメ あたしゃ、ボケてなんかいません!(ガチャリとインターホンを切る)  

 上記のように、本来であれば介護認定の手続や介護保険のホームヘルパーなどの利用に結びつけるべきケースであるにもかかわらず、本人がかたくなに拒否するケースは少なくありません。  
 こうしたケースに対する正攻法のアプローチというものはなく、支援者が何度も訪問を重ねる中で、たまたま支援の糸口になるようなきっかけを発見し、そこから少しずつ本人と信頼関係を築いていくことになります。とても時間がかかる仕事であり、支援のスピードが間に合わず、老人本人の体調が悪化し、そこから救急車で病院へ搬送されて、そのまま亡くなることも珍しくありません。  
 何とか本人との信頼関係ができて、少しでもホームヘルパーや訪問看護師などの他人を受け入れる余地があれば、そこから少しずつサービス量を増やし、支援の量を増やしていきます。もちろん、本人がへそを曲げると支援が頓挫してしまうおそれもあるため、常に本人の意向や本音の部分を測りつつ、慎重に、慎重に進めていきます。  
 おそらく、本人も自分の家がごみ屋敷だということは気づいているし、「自分で何とかしたい」、「自分でやりたい」という気持ちもあるのですが、高齢ゆえ体力が持ちません。しかし、その事実を他人に指摘されたり、頼んでもいない「救いの手」を差し伸べられることは、本人にとっては、時に非常に腹立たしいことなのです。  
 そんなわけで、こうしたケースに対してケアマネジャーが介入するときも、非常にデリケートな対応が求められます。このケースでいうと、ごみの掃除や片づけなどを急いでやろうとすると、まず失敗します。それよりも、本人は温かいごはんを食べられているかな? 温かいお風呂に入って、体を清潔にしているかな? きちんと医者にかかって薬を飲んで、健康を整えているかな? といった本人が生活する上で、もっと重要な部分に目を向け、そこに支援の必要性はないのかを探ります。そこにまずサービスを投入し、支援していきます。その経過の中で、少しずつ本人に信頼してもらえます。「お薬がなくならないように、このガラスケースの中に入れておきますけど、この荷物(本当はごみ)が危ないから、少し片づけますね」などいいながら、(本人のためにという名目で)片づけたり、ごみを捨てる段階へ少しずつ移行します。

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