2015.06.25 選挙
住民投票の投票率
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之
はじめに
統一地方選挙の特徴は、無投票当選や低投票率であったため、これまで3回はそのような選挙に関することを論じてきた。しかし、自治体レベルにおいて、常に有権者が無関心で投票にも行かないというわけではない。2015年5月17日に行われた大阪市の住民投票(1)では、66.83%という、それなりに高い投票率を示した。重要だと有権者が思えば投票所にそれなりに足を運ぶようにも思える。
住民投票だから高投票率?
もちろん、候補者の当選を決める選挙ではなく、設問に対する賛成・反対を問う住民投票ではあったので、一概に同列に論じられない面はあろう。選挙は間接民主制の仕組みであり、住民投票は直接民主制の仕組みであり、両者は対立するものと考えることもできる。すなわち、間接民主制の選挙では低投票率・無投票当選になるが、直接民主制の住民投票では高投票率になるのであって、間接民主制が住民から飽きられ、直接民主制が求められている、というように解釈することもできよう。したがって、大阪市の住民投票に現れる高投票率は、むしろ間接民主制あるいは代表民主制の正統性の危機を物語るものでしかない、というわけである。
例えば、2013年12月15日に北本市で実施された住民投票でも、新駅設置建設についての是非が二者択一で問われた。投票率は62.34%となり、前回市長選の53.82%も大きく上回っている。投票結果は賛成8,353、反対2万6,804の3倍以上の差をつけて反対多数であった。このため、市長は自らが進めてきた新駅設置建設を断念することになった。
しかし、実際には住民投票だからといって、高い投票率になるとは限らない。例えば、航空自衛隊入間基地に近い小中学校にエアコンを設置するかどうかを問う所沢市の住民投票が2015年2月15日に投開票された。賛成が反対を上回ったものの、投票率は31.54%で、4年前の市長選の34.68%さえも下回った。この場合には、賛否に有権者数の3分の1以上に達したら結果を重く受け止めるという住民投票条例の仕組みであったが、そもそも投票率自体がそれに達しなかったのである。
また、小平市の都道建設計画の見直しを問う住民投票は、2013年5月26日に行われたが、投票率は35.17%だった。小平市住民投票の場合、投票率が規定の50%に届かず不成立に終わったため、5万枚以上も集まった投票用紙は開票されることなく、したがって、投票した人の賛否も不明である。