2022.01.14 コロナ対応
【セミナーレポート】「第2回 地方行政実務学会全国大会」コロナ対策からみた国と地方の役割
2021年12月11日(土)・12日(日)、「第2回 地方行政実務学会全国大会」が開催された。「コロナ対策からみた国と地方の役割」をテーマに据え、1日目のシンポジウムが対面とオンライン配信の併用型で実施された。2日目はオンラインで、実践・研究報告とラウンド・テーブル・ディスカッション(RTD)のメニューが設けられ、様々な意見が交わされた。
1日目の基調講演及びパネルディスカッションの様子をレポートする。
シンポジウム『コロナ禍からみえる国と地方の役割』では、まずキーノートスピーチとして、片山善博氏(早稲田大学政治経済学術院教授(元総務大臣、元鳥取県知事))による「コロナへの対応から見えてきた地方自治の課題」についての講演が行われた。
片山氏は、コロナが起こることを想定した法体系ではなく、新型インフルエンザ等対策特別措置法を適用している現状で、国と地方の関係には決まっていないことが多いとした上で、しかし、決まっていたことについても正しく運用されなかったとし、国が緊急事態宣言を出し、それを受けた都道府県知事が必要な対策を講じるという特措法に定められた役割分担に従わずに一律の時短要請が受け入れられてしまったことや、国の通知に従い余力のある県もPCR検査を行わなかったこと、休業要請の保証・協力金等の財源について地方財政法で定められた協議がなされなかったことなどを挙げ、地方分権改革の成果が振出しに戻ってしまったと指摘した。次いで、法治主義の空洞化として、国や自治体のみならず、議会、マスコミを含め、法律に基づく行政という認識が薄れているのではないかという危惧について、自粛の要請、公表、自宅療養、検温等の実際の状況と、特措法の規程の読み方、自治立法の在り方などについての疑問を混じえた提言を行った。
次いで行われたパネルディスカッションでは、パネリストに片山氏のほか牛山久仁彦氏(明治大学政治経済学部教授)、出石稔氏(関東学院大学、元横須賀市)、モデレーターに大島博文氏(大阪成蹊大学、元神戸市)を迎え、「コロナ対策の課題・問題点とあるべき姿~地方分権との関係性を踏まえて」をテーマに意見が交わされた。
基調講演の地方分権改革が振出しに戻ったのではという意見を踏まえ、牛山氏は、ワクチン接種における国地方関係の混乱を見て、国と自治体が対等で行う事務として見直す必要について、また自治体の負担が増す中、保健所業務返上の流れがあることは残念であるとして、住民本位のコロナ対策は、自治体が担うことに意味があると話した。出石氏も、通知による国からの事務への疑問、保健所の位置付けの見直しの必要性などの問題を提起し、自治体における研修が減っていることや全庁的な法解釈能力の低下の問題、議会の審査機能が不十分であることなど、広く課題について対話がされた。
なお、2日目には、以下のプログラムが行われた。「研究論文の書き方セミナー:政策法務編」報告セッション:「AIを活用した幸福シミュレーションによる政策立案の可能性」(研究報告)、「都道府県議会議員に係るデジタル化調査の結果について」(実践報告)、「地方自治体における職員の組織管理方法に関する考察」、「コミュニティ・ガバナンスにおいて求められる自治体職員の役割」、「社会的養護の現状と代替養育における里親等委託推進における課題」、「努力義務の本格的な法的検討序論」RTDセッション:「新型コロナ対応検証プロジェクトに向けて」、「パブリック・サービス・モチベーション」、「東京2020大会が遺したもの:「レガシー」を考える」