2021.10.11 選挙
政党の二連のぼりを選挙運動期間前に街頭に掲示したり選挙期間中も掲示したままにすることができるか/実務と理論
内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(避難生活担当)付 葛城優美
1 はじめに
本問の執筆時点(令和3年6月25日)における現任の衆議院議員の任期は令和3年10月21日であり、年内に衆議院総選挙(解散総選挙又は任期満了総選挙)が執行されることが確実であるところ、今後、その候補者となろうとする者や政党等の政治活動が活発になることが見込まれる。
本問では、公職選挙法(昭和25年法律100号。以下「法」という)等における文書図画の掲示等に関する規制について整理した上で、設問の検討を行うこととする。
なお、文中意見にわたる部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。
2 文書図画の掲示等に係る規定の整理
公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下「公職の候補者等」という)の政治活動のために使用される当該公職の候補者等の氏名又は当該公職の候補者等の氏名が類推されるような事項を表示する文書図画の掲示については、法143条16項において規制が設けられている。同項の規定は、後援団体の政治活動のために使用される当該後援団体の名称を表示する 文書図画についても対象としているところ、一般の政党は通常後援団体には当たらないものと解されているため、政党の政治活動のために使用される文書図画は、同項の規制を受けない。本問では、以下、後援団体の文書図画についての解説は省略する。
文書図画のうち、立札及び看板の類については、政治活動のためにする演説会等の会場において当該演説会等の開催中使用されるもののほか、公職の候補者等1人につき政令で定める総数の範囲内で、当該公職の候補者等が政治活動のために使用する事務所ごとにその場所において通じて2を限り掲示されるものに限り、掲示することができる。
この場合、法143条17項の規定により、当該立札及び看板の類は、縦150センチメートル、横40センチメートルを超えないものであり、かつ、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(衆議院比例代表選出議員又は参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会。以下同じ)の定めるところの表示をしなければならない(具体的には、証票を貼らなければならない)こととされている。
他方、選挙運動用文書図画の掲示については、法143条に規定されているもの以外、原則として使用することはできず、法146条1項の規定により、何人も、選挙運動の期間中は、いかなる名義をもってするを問わず、法143条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名や政党その他の政治団体の名称等を表示する文書図画を掲示することはできない。
また、法147条5号の規定により、都道府県又は市町の選挙管理委員会は、選挙運動の期間前又は期間中に掲示した文書図画で、(選挙期間中において)法146条の規定に該当するものがあると認めるときは、撤去させることができる。この場合において、都道府県又は市町村の選挙管理委員会は、あらかじめ、その旨を当該警察署長に通報するものとされている。