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2015.05.25 政務活動費

第41回 政務活動費の使途

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全国市議会議長会調査広報部参事 廣瀬和彦

QA市においては本会議や委員会出席にかかる費用弁償については支出しないことを費用弁償条例で規定している。そこで、当該公務出席にかかる交通費を政務活動費で支出することは可能か。

A政務活動費は地方自治法(以下「法」という)100条14項〜16項に規定された会派又は議員に対する補助金又は交付金であり、「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる」とされている。

【法100条】
⑭ 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。
⑮ 前項の政務活動費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。
⑯ 議長は、第14項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。

 この法100条14項〜16項に規定された政務活動費の制度は、地方分権に伴い地方公共団体の自己決定権や自己責任が拡大することにより、議会の担う役割がますます重要になることから、議会の審議能力を強化し、議会の調査研究活動の基盤の充実を図る必要が生じるため、議会における会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化し、併せてその使途の透明性を確保しようとした制度である。
 ここで、本問におけるように本会議や委員会の出席にかかる交通費等の経費を政務活動費で支出することができるか問題が生じる。
 そもそも公務等への出席にかかる経費に対して支払われる費用弁償は、法203条2項に規定された実費弁償と同じ意味を有するものであり、議員の職務を執行するに当たって要した経費を償うために支給される金銭をいう。そして費用弁償は普通地方公共団体が議員に対して支給しなければならない義務を負うものであって、これを受ける権利は議員としての公法上の権利である。

【法203条】
② 普通地方公共団体の議会の議員は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。

 しかし、費用弁償はその支給方法を条例で定める必要があるため、議員の権利として費用弁償を受け取る権利を有していても、条例で手続規定を定めていなければ支給することが実質的にできないこととなる。

【法203条】
④ 議員報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

 さて、地方公共団体の議員が本会議や委員会、協議等の場として規定された全員協議会への出席、議員派遣等の議会としての活動は、公務であり法203条における費用弁償の対象であるため、費用弁償の支給により対応すべきものである。
 しかし、昨今において地方財政が厳しさを増していることから、支出削減の一方策として当該地方公共団体内においてかかる費用弁償を支給しないとする取扱いをする団体が多数存在する。
 そうした場合、費用弁償の代わりに政務活動費で公務にかかる費用弁償分を支出することが可能であるとする考えがある。
 すなわち、平成23年3月23日名古屋地裁における判決において、政務調査活動は、委員会活動と重複する場合もあるところ、市議会の議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例等により費用が支弁される場合には、当該経費のために政務調査(活動)費を支出することは許されないことは当然であるが、費用支弁がされない経費については、委員会活動であっても政務調査(活動)費を支出することは、本件規程に定める使途基準に合致する限りにおいて差し支えないとする判示があった。ちなみにこの裁判は、平成25年1月31日名古屋高裁に控訴され、平成25年9月19日最高裁で結審したが、名古屋高裁や最高裁では費用弁償にかかる経費を政務活動費で支出することについて論点として出てこず、それに対する判示も特になされていないので、平成23年3月23日名古屋地裁での考えが一連の裁判の判決として確定はしていない。
 しかし、平成23年3月23日名古屋地裁の考え方には問題がある。政務活動費はそもそも議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部を交付するものであり、議員に対しては法204条の2により報酬・費用弁償・期末手当しか支給できない旨規定がなされている。

【法204条の2】
 普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには、これをその議会の議員、第203条の2第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない。

 政務活動費は、日常の議員活動においては法204条の2の規定により何ら経費等に対する手当てがなされないため、当該活動に対し少しでもその経費を補助しようとする趣旨に立脚するものである。それゆえ、すでに議員の権利として法203条において手当てがなされている費用弁償について政務活動費を支出することができるとすることは、政務活動費制度の趣旨に反することとなると考えられる。
 それゆえ、費用弁償の対象となる活動に対し、費用弁償が支給されないことをもって政務活動費でその経費を代替して支払うことは困難であると解する。

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