2021.05.25 予算・決算
番外編 令和3年度当初予算編
前所沢市議会議員 木田 弥
令和3年度予算審議において二つの市議会から、予算修正が可決したとのうれしい情報が寄せられた。すでに現役を退いた身ではあるが、「地方議会の予算修正こそ議会改革の一里塚」と考える筆者としては、より多くの市町村議会で、予算修正が当たり前のことになっていただきたい。そのためにも、生々しい予算修正の状況を報告させていただく。
人口が多い市議会の予算修正ほど難しい?
今回紹介するのは、千葉県松戸市議会と埼玉県所沢市議会。松戸市は人口約49万人で議員定数は44人、所沢市は人口約34万人で議員定数は33人。人口規模が大きくなればなるほど比例して議員数も増え、合意形成がより複雑になる。そのため、修正の困難度が高くなるようだ。そうした中での予算修正である。両市議会ともに、予算案の審議は、松戸市議会が予算審査特別委員会(定数13人)、所沢市議会が予算常任委員会(定数12人)において予算を審査している。
修正案の文案については、筆者が記した『自治体議員が知っておくべき政策財務の基礎知識』(江藤俊昭・新川達郎編著、第一法規、2021年)第3部第8章「予算修正の勘所」で定義した修正案の2分類、「修正部分列挙形式(1)」、「修正部分訂正形式(2)」に従って分類すると、松戸市が「修正部分訂正形式」、所沢市が「修正部分列挙形式」での提案となっている。
人口が多く、議員定数が30人を超える市議会であったとしても、両市議会のように、予算を審査する委員会があり、かつその委員会のメンバーがほぼ全員参加の委員会ではなく、一般的な常任委員会+数名の委員会構成である方が合意形成しやすく、修正へのハードルは低い印象だ。
予算修正が常態化し、手法も洗練されつつある松戸市議会
令和3年度松戸市一般会計予算議案が修正された松戸市議会。今回が松戸市議会初の予算修正なのかを調べるため、松戸市議会会議録を「予算修正案」のワードで検索した。どうやら、今回の修正が初めてではないことが分かった。遡及できる範囲でいえば、平成22年3月には、平成22年度松戸市病院事業会計予算修正案が、9月にも同様に松戸市病院事業会計補正予算修正案が可決。平成24年度、平成25年度当初予算では、松戸市一般会計予算修正案が可決。平成26年3月定例会では、平成26年度一般会計当初予算の修正案と、平成25年度の最後の一般会計補正予算の修正案が可決。続いて、平成30年3月定例会で平成30年度一般会計予算修正案が可決。予算修正が頻繁に行われている実態が見えてきた。
今回取り上げる令和3年3月松戸市議会定例会では、令和3年度当初予算案に対して、修正案が2種類提案された。2会派2人から提案されたのが、表1に示す案(以下「提案A」という)であり、「市役所機能再編整備基本計画策定業務委託」を含め全体で歳出が5件、歳入が1件の修正が盛り込まれている。一方、別の2会派6人から提案されたのが、表2に示す案(以下「提案B」という)であり、「市役所機能再編整備基本計画策定業務委託」のみ歳出1件、歳入1件の修正である。
表1 提案A
表2 提案B
いずれの提案についても、「市役所機能再編整備基本計画策定業務委託」が含まれている。もめることの多い松戸市役所本庁舎の新設移転が政治的争点のようだ。
歳入の修正項目が双方ともに、「財政調整基金」の修正で提案されているため、提案Aに提案Bが包含されている構造である。