2021.01.29 コロナ対応
第3回 コロナ禍における広報・広聴活動のDXと展望
社会情報大学院大学 五井俊哉
1 本稿の内容について
前回は、「広聴活動の現状分析と新たな政策構築の手法と提案」について岩手県北上市の事例を取り上げ、テキストマイニングを用いたコミュニケーション分析の手法を紹介することで、広聴活動への貢献を目指しました。
本稿はコロナ禍における広報・広聴活動のニューノーマルと展望について言及します。コロナ禍における情報ソースとの行動を分析することで、読者が所属する団体の広報・広聴活動に貢献すると考えます。
2 急速に進む情報のDX(デジタルトランスフォーメーション)(1)化
昨今、豪雨や台風など自然災害は毎年のように起こっています。加えて2020年初頭からは新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」といいます)が世界的に猛威を振るっています。このような社会的混乱時には、いつも以上に様々な情報が憶測で流れ、拡大する可能性があるといわれています。
事例として記憶に新しいのが、今年2月頃から広まった「トイレットペーパーの不足」です。事の発端は、SNS内で広まっていた情報を、テレビのワイドショー等がそれを打ち消す形で「トイレットペーパー不足は誤り」と報道したことです。この報道により、かえって消費者心理に火をつけてしまい、一時的な需要過多に陥り、住民生活に大混乱を引き起こしたことは記憶に新しいと思います。
まずはこういった状況下で、住民の情報入手のソースにも変化が見られたかを見てみます。日本新聞協会が2020年5月に行った調査によると、普段接しているメディアで「コロナ禍で接触が増えた・やや増えた」と回答した中で、最も多かったテレビ(58.3%)を除くと、ニュースサイト(57.0%)、動画サイト(56.6%)、新聞社サイト(56.3%)、新聞社サイトの有料版(53.1%)、検索・ポータルサイト(52.9%)、SNS(52.1%)とネット系メディアが50%以上の伸びを示していました。一方、ネット系以外のメディアは新聞(紙)(40.4%)、ラジオ(29.3%)、雑誌(19.7%)にとどまっていました(図1)。