川崎市議会議員を2011年から2期つとめ、2019年からは新しい道を選んだ小田理恵子さん。議員時代にはご自身が描く、地方議会をモチーフにした漫画の分かりやすさと鋭い切れ味、発信力が話題になりました。このたび『議員NAVI』編集部が小田さんの新しいオフィスにお邪魔してお話を聞きました。
小田理恵子さん(現(株)Public dots & Company 取締役/元川崎市議会議員)
“ド素人”として議会に入った
編集部 渋谷の街が一望できる、最先端のオフィスですね。
小田理恵子さん(以下、「小田」)
眺めがいいですよね。ここ(『SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)』)は、2019年11月に開業したばかりの施設で、アカデミア、ビジネス、クリエイティブなど、領域を超えたパートナーが集まって、グループやプロジェクトで活動できる空間です。
個⼈やグループで新しい価値創造に挑戦する「QWSメンバー」を中⼼に、法⼈会員「QWSコーポレートメンバー」、各分野で活躍しているリーディングプレイヤーなど、SHIBUYA QWS の価値に共感し⽀援するコミュニティ「QWSコモンズ」の3種類が会員となって、ここを利用しています。
そんな中、仲間4人で起業した「Public dots & Company」は、BOOSTER PARTNERとして入居しており、会員たちの取組みを後方支援することも期待されています。
2019年11月に開業したばかりの『SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)』
編集部 新しいスタートを切るにはぴったりの場所ですね。川崎市議会という比較的大きな自治体で2期地方議員をお務めになって、いかがでしたか。初めの4年間と、次の4年間とではまた違いましたか?
小田 やはり1期目、2期目と期数を重ねていく中で、自分が取り組むことのできる範囲が広がって、人間関係ができてきたという実感があって、やりがいはありました。正直なところ、3期目に挑戦するかどうかも結構悩みました。もしかしたら3期目の方がそれまでよりもやれることは多いかもとも感じていました。
編集部 そうだったんですね。小田さんが議員を志したきっかけの一つが、自治体の行財政改革に民間企業という立場で関わったことだったとお聞きしました。地方議員になって、行財政改革については、外から見ていたときと、中に入ったときとでギャップはありましたか。
小田 私は全くのド素人として議会に入ったと思っています。だから自治体の内部に入って、ようやく行政の実態が分かりました。私が住民の立場から行政改革すべきと思っていた部分は、行政全体からすれば一部分だったわけです。
行政が全体として動いているときに、改革をどこから始めるべきなのか。課題として表に見えやすい部分から取り組むべきなのか、そうではなく、より本流の部分の改善や見直しが必要なのか、そこは自治体ごとに様々なアプローチが考えられるところだと思っています。
編集部 一住民として行政を見ていたのが、今度は住民代表である議員として行政と対峙することになったわけですよね。地方議員は議案を見たり、職員と会話をしたりと、行政内部の情報に触れる機会が多いかと思います。住民からすれば端的に課題であっても、実際のところその裏側には自治体としての論理や、議会として意思決定をしてきたという経緯が多かれ少なかれあるわけですよね。議員になって、行政の全体像が見えてきたということでしょうか。
小田 地方議会には調査権がありますし、何より日常的に職員と会話する中で見えてくるものもありますよね。私は、それぞれの立場にそれぞれの理があると思っています。100%問題があるという問題はないんですね。ただ、様々なステークホルダーがいる中で、この人にとってはメリットだけど、この人にとってはデメリットだねというのはある。
議員として経験を重ねるうちに、個々の問題の所在、そこに内在する人間関係とか利害関係が見えてくるようになってきたなというのはありますね。
それぞれの立場にそれぞれの理があるのでは、とする小田さん