地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2020.02.25 議員提案条例

第5回 議論する議員提案条例③ ─議会での議論を深めるための首長提案条例の一部修正─

LINEで送る

関東学院大学法学部地域創生学科教授 津軽石昭彦

1 議会の議論が深まらないのはなぜか

  議会は、しばしば「言論の府」と称される。広辞苑によると、「言論」とは「言語や文章によって思想を発表して論ずること」、「府」とは「事物や人の多く集まる所。みやこ。転じて、物事の中心」を意味するとされる。つまり、議会とは「地域の多様な意見や考え方の人々が多く集まり、活発に議論が行われる中心となる場」ということと解される。 
 しかし、今なお地方議員の中には、任期中一度も一般質問に立たない議員が多数いるといわれている。つまり、自ら「言論の府」に身を置きながら、議論することに背を向けている議員が数多くいるということである。 
 なぜ、議論することをしない地方議員が多くいるのか。これには、「意識の問題」と「スキルの問題」の二つの要因があると筆者は考える。 
 第1の要因である「意識の問題」は、伝統的なタイプの地方議員に多い。すなわち、このタイプの議員は、自らの役割を地域や支持者への利益誘導と考え、地域や支持者の要望に応じて、執行部サイドの担当課に直接、いわゆる「口利き」的な活動を行い、要望に応える。このような政治手法をとる議員は、議会の正式の場での質疑討論の必要性を感じることはあまりない。したがって、一般質問をしようという意識に至らないのである。しかし、このような口利き行為は、行政の透明性の観点から、議員や職員OBからの口利き行為を記録し情報開示を可能とする条例や要綱がいくつかの自治体で策定され、制度上、かつてのような露骨な口利き行為は影を潜めている。また、平成の大合併以後、広域化した自治体では、住民の議員へのニーズが変わり、狭い地域の利害にかかわる課題よりも、自治体経営全体の監視、広域的な政策形成などに住民の関心が移ってきており、住民ニーズの面からも、必ずしも従来の口利き的な手法が住民からは徐々に求められない客観状況となっている。
 第2の要因が「スキルの問題」である。地域や住民にとって有用な議論をするためには、住民のニーズを踏まえ、首長の政策がそのニーズに合致しているか、両者間のギャップを測る「ものさし」を各議員が持っていることが重要である。首長の政策は、具体的には予算や条例などの議案の形で議会に示される。つまり、議案の審査力が「ものさし」の役割を果たす。この「ものさし」が精密であれば、住民ニーズとのギャップを正確に測定することが可能となる。当然、すべての住民ニーズに対応することは限られた行政資源の中で難しい場合もあるので、そのギャップが許容できる場合とそうでない場合がありうる。許容できない場合は、一般質問などの質疑の中で首長の政策を質(ただ)し政策変更を求めたり、議員が対案を示し修正する場合もありうる。このように「住民ニーズと政策とのギャップを正確に測定して修正させるチカラ」が議員としての「スキル」ということになる。このスキルの究極的な形が、「議案を修正するスキル」である。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る