2019年4月の統一地方選挙から政策ビラが解禁され、政策型選挙のためのツールが充実しました。
『議員NAVI』では選挙直前に座談会を開催し、ビラ活用のアイデアや期待などをお話し頂きましたが(2019年2月「座談会 政策ビラをどう作る?」)、地方選を経て、候補者の皆さんが実際にどのように政策ビラを活用されたか、よかった点や悪かった点、今後に向けた改善点など、ざっくばらんに改めてお話を頂きました。
今後の選挙戦での政策ビラの更なる活用に役立てていただければと思います。(編集部)
2019年4月の統一地方選挙から解禁された政策ビラ
<(上)目次>
■政策ビラは、実際どう使われたか
■「4,000枚」をどう使うのか
■政策ビラへの住民の反応はどうだったか
■政策ビラの中身の工夫
■選挙制度にはまだ課題も
■昔ながらの選挙戦が変わってきた?
青木佑一(以下、青木) 早稲田大学マニフェスト研究所の青木佑一です。前回に続きコーディネータを務めさせて頂きます。
川名ゆうじ(以下、川名) 東京都武蔵野市議会の川名ゆうじです。4月の選挙で再選し、5期目となりました。今回の選挙で試行錯誤したことなどをお話できればと思います。
佐藤まさたか(以下、佐藤) 東京都東村山市議会の佐藤まさたかです。5期目になりました。政策ビラを使った選挙戦に非常に手ごたえを感じました。
黒川まさる(以下、黒川) 横浜市議会の黒川です。横浜市自民党会派に所属しています。今回の統一選では、個人の政策ビラと、政党のビラの両方を活用しました。政令指定都市ならではの部分もあるかとは思いますが、工夫したことなどをお話したいと思います。
田中たかし(以下、田中) 埼玉県富士見市議会の田中たかしです。今2期目で、今回私の自治体では市議会議員選挙はありませんでしたが、地方選での政策ビラの使われ方について関心を持ってみていたこともあり、今回の座談会に参加させて頂きます。
政策ビラは、実際どう使われたか
青木 まず前回座談会の振り返りをしたいと思います。周りの議員の様子を見る限り「政策ビラ、何を作ったらいいかわからない」という候補者が多いという認識が共有されました。しかし一方で、「選挙では候補者の情報が不足している」と感じている有権者は、政策ビラを好意的に受け取ってくれるのではという期待もしました。そのうえで、政策ビラをどのように作るか、どのように配るかという議論を行いました。
皆さん、実際に政策ビラを使った選挙を行ってみてどうでしたか?
黒川 横浜市は政令指定都市であり、選挙制度がほかの自治体と異なる中選挙区制という特殊なものです。私は自民党所属ですが、複数の候補者がいる中で自民党としての横浜市の選挙、金沢区という選ばれる場所での選挙という2種類の側面がありました。金沢区は定数が5、立候補者が7人で自民党だけが2人擁立しました。そういうこともあり、自分の地元ネタ満載の自分のマニフェスト(=政策ビラ)に加え、横浜自民党として政党のローカル・マニフェストを別に作りました。自分自身の政策は政策ビラに、横浜市としての政策は政党のビラのほうにという形ですみわけをして制作しました。
政策ビラと政党ビラを作り、使い分けたと語る黒川氏
川名 政策ビラによって事前に期待した以上の成果があがったかは正直よくわかりません。というのも、私は、選挙期間前にも毎日ビラを配っており、連続して選挙期間に入ったわけです。有権者側は、ビラの性質の区別なく受け取っていたように見えました。候補者としては、政策ビラ解禁というのは画期的という感があったけれど、有権者側にはそのことがあまり伝わっていなかったようにも思います。
青木 有権者には、選挙期間外と期間内の区別が分かりにくいですよね。どうしたらよかったのでしょうか。
川名 それを踏まえた反省としては、直前ビラと政策ビラはデザインを思いっきり変えたほうがよかったと思います。「選挙期間中ならでは」という作りやデザインにした方が伝わります。
佐藤 前回の座談会で、政策ビラの有効活用のためのアイデアが出ました。解禁後初回の選挙ですから、ある意味実験という感じで、それらを試しました。具体的には、「他の候補者との明らかな差別化」、「4,000枚という中途半端な枚数をどう生かすか」、「誰にどう渡すか」です。
前回の座談会では、「新聞折込を活用しないと配り切れない」という意見や「各紙読者の性質も考慮」というアイデアも出されました。それを踏まえて、私はある一紙に折込を入れることを決め、その読者層を意識したデザインとしました。
青木 田中さんは今回自身の選挙がなかったこともあり、ほかの方の選挙戦をご覧になることができたのではないでしょうか。前回の座談会では、「普段の政治活動で作成するビラやポスターの延長上で作成をされる候補者が多いのではないか」と予想されていましたが、どうでしたか?
田中 私が見た限りではありますが、全体的な傾向として、ビラを2種類作る方は、ほとんどいませんでしたね。4,000枚という数が中途半端でもあり、その中で2種類作り分けるのは難しいのかなと思いました。
選挙期間前に配っているビラとほぼ同じものを流し込むスタイル、そして「表がポスター・裏が選挙公報」のスタイルが予想通り多かったです。
枚数制限があるなかで2種類以上作り分けるのは難しいのではと指摘する田中氏