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2018.07.25 予算・決算

第4回 最終日に追加で提案された補正予算案を減額修正

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人口30万人を超える自治体議会議員 木田弥

平穏に終わるはずだった6月定例会だが

 平成30年6月定例会が終わった。我が市議会にとって、6月議会は、人事が最大の関心事。議会初日は、新議長・新副議長などの選出が慣例となっている。議会改革の教科書的理解では、議長任期は原則4年。代えるとしても、せいぜい2年に一度。「毎年、議長ポストをたらい回しにするのはよろしくない」との見解が支配的なようである。そうした考えも分からなくはないが、我が市議会では、議長や副議長など主要な役職が毎年代わることで、議会が活性化している事実がある。先日発表された早稲田大学マニフェスト研究所の議会改革ランキングでも、我が市議会は、県内で1位、全国でもベスト30位内に入っている。
 議長が毎年代わることが、我が市議会に限っては、それほどマイナスには作用していない。ちなみに今回、議長は我が会派から選出された。
 6月定例会は、議長などの選出が終わると、ポスト争いの疲れもあり、闘争心を失い、その後の議会審議は平穏に進むことが通例のようだ。今議会も、そのような経過をたどると思われた。しかし、予想は見事に裏切られた。最終日に追加提案された補正予算案の減額修正案が可決されたのだ。しかも、3分の2を超える圧倒的多数で。
 前回、できれば首長の再議権行使を避けるためにも、過半数ではなく、3分の2以上の賛成による修正案可決が望ましいとお伝えした。今回は、議長を除く32人中28人の議員の賛同を得て可決した。それほどひどい補正予算案が提案されたということでもあるが、普段はよほどのことがない限り予算修正案には与(くみ)しない会派も、さすがに「これはひどい」ということで、減額修正には積極的であった。
 どんなひどい内容であるかは、おいおいご説明するが、まずご理解いただきたいのは、今回、減額修正の対象となった補正予算案は、議会開会冒頭に提案されたものではなく、最終日の提案であったことだ。我が市議会では通例として、最終日に教育委員や公平委員、人権擁護委員などの人事案件が諮られることが多い。人事案件以外では、緊急性の高い、すぐに事業に着手しなくてはならない補正予算案や条例案が提案される。具体的には、災害に伴う補正予算案などである。最終日は、会期延長をしない限り、十分な審議時間が確保できないこともあり、必然的に、審議時間をそれほど必要とせず、全員が賛成しやすい議案が提案の中心となる。
 審議方法も、委員会付託を省略して、全体審議となることが多い。特に人事案件では、審議そのものがはばかられることもあり、質疑や討論なども行われることはほぼない。最終日に提案される議案とはどのような性質のもので、どういった諮られ方をするかをおおむね理解していただいた上で、今回修正された補正予算案についてご説明する。

最終日に補正予算案が提案されることに

 6月議会に提案される補正予算案は、3月に本予算を可決したばかりなので、小幅な補正となるのが通例だ。議会も日程の折り返しを迎えた頃に、最終日に補正予算案が提案されることが非公式に伝えられた。人事案などであれば、議会開会前の代表者会議などで、最終日に人事案が提案される予定であることが非公式にアナウンスされるのがお約束だ。よほど緊急の案件かと思いきや、内容は、いずれも海外出張案件だという。海外出張でそれほど急ぐ必要があるのか。当然抱いた疑問である。
 詳細が公表されたのが、議会終了日前日。ここで、全容が明らかになった。議案件数は1件であるが、その内容は2件の海外出張を含んでいた。1件は市長と担当職員2人、計3人による、今後、ある事情から連携が予定される欧州の某都市を中心とした環境関連の海外出張。もう1件は、東京オリンピック・パラリンピックで合宿地として受け入れる欧州の対象国への打合せを目的とする海外出張。こちらは職員1人の派遣。地元大学の関係者や県職員と一緒の派遣ということもあり、これらの関係者がすでに参加を決めており、ホストタウンである我が市だけ参加しないということは言い出しにくい状況であった。歳入は、いずれも国庫補助などが見込めないため、全額財政調整基金からの繰入れである。
 私も含めた議員が驚いたのが、その日程である。市長が出かける欧州海外出張については、出発日が議会終了日の2日後であった。さらに、参加する職員の1人は国からの出向職員で、すでに7月末には国へ戻る予定となっていた。「いなくなることが分かっている職員を同道させることに、どんな政策的な意味があるのか」、「行かせるのであれば、今後の連携を担当する職員が行くべきではないか」、「これでは、国から出向してきた職員の卒業旅行ではないのか」。事前の議案に対する会派ヒアリングで出た疑問である。
 最終日の補正予算案は全体審議で行うことが通例であるが、我が市議会では、委員会付託を求める会派がいれば委員会付託を行うことが議会運営委員会で確認されていることもあり、委員会付託をして、本会議だけでなく、委員会でもじっくり議論しようということになった。
 議案の説明が終わり、議会運営委員会で、委員会付託が確認された。その後、担当職員からのヒアリングが会派ごとに行われた。このヒアリングを通じて、市長ら3人の欧州出張は削除するべきとの意見が議会内でまとまりつつあった。前日の時点で、市長らの海外出張を削除する修正案はすでに手回しよく、同僚のS議員が作成済みであった。これまでの連載でもご説明したように、我が市議会における予算修正の手順や書式は、トラブルを経て、議会と執行部との間で統一的な見解が形成されている。
 特に、今回のように財源が財政調整基金の取り崩しであれば、容易に修正案が作成できる。担当職員も、もはや予算修正でたじろぐことはなくなった。

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