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2018.05.25 住民参加

第5回 地域の担い手を育み、支え、増やす若者議会〜愛知県新城市〜

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地方自治ジャーナリスト 相川俊英

消滅可能性都市・新城市の起死回生策

 東海道新幹線を豊橋駅で下車し、JR飯田線の特急「ワイドビュー伊那路号」に乗り換えた。家並みの中を疾走した伊那路号はほどなくして、山あいへと入っていった。車窓の眺めは緑あふれる田園風景に一変し、揺られること約25分。特急電車は2つ目の停車駅となる新城駅に到着した。
 小さな新城駅舎を出て、街中を歩いて取材先まで向かうことにした。日曜(4月22日)の午前中で、駅前周辺は歩行者天国となっていた。路上に商品を積んだ軽トラックがズラリと並び、そぞろ歩きする買い物客でにぎわっていた。人混みを縫うようにして取材先である新城市文化会館を目指した。途中、何度も行き交う人に道を尋ねてのことだった。
 愛知県の南東部、奥三河の玄関口に位置する新城市は、「長篠・設楽原の戦い」の地として知られる。江戸時代は豊川の舟運と伊那街道の宿場町として栄えた。広大な市域を誇り、愛知県内では豊田市に次ぐ。もっとも、その8割が森林。一方、人口は減少傾向が続き、現在、4万7,084人(2018年4月1日時点)。隣接した豊川市などへの転出が止まらず、年に500人規模で減り続けてきたという。このため、新城市は2014年に民間の研究機関が発表した「消滅可能性自治体」に愛知県内の市として唯一、挙げられてしまった。市全体に大きな衝撃が走ったのは、いうまでもない。
 そんな山あいの小さな地方都市が手探り状態で始めた取組みに、今、全国の自治体から熱い視線が注がれている。新城市が2015年にスタートさせた「若者議会」である。今年(2018年)で第4期となる新城市の若者議会は、自治の担い手を育む画期的な取組みとして高く評価されている。
 第4期若者議会の開会日(5月2日)前に準備会なるものが開かれることを知り、会場となった新城市文化会館に向かった。準備会は若者議会の新しいメンバーが初顔合わせをする場であると同時に、若者議会の仕組みや趣旨、委員としての心構えなどを改めて確認し合うものだ。文化会館に遅れて到着し、息せき切って会場の扉を開けると、広い部屋は若い男女でいっぱいだった。彼らが発散するエネルギーに早くも圧倒されてしまった。また、会場を包む雰囲気にも驚かされた。てっきり緊張感で張り詰めたものになっていると思っていたら、これが大違い。スーツ姿はほとんどなく、カジュアルな格好の人ばかりで、皆、表情も和やか。部屋のそこかしこから笑い声が漏れてくるなど、和気藹々(あいあい)としていた。会議にありがちな重苦しさはみじんもなく、部屋の中は活気に満ちあふれていた。
 大会議室に大きな人の輪が生まれ、自己紹介が始まった。若者議会委員や市の担当職員など40人ほどいたため、それだけで1時間を要した。自己紹介が終わると、床にシートが敷かれて仲よく昼食となった。午後はグループに分かれて街歩き。それも若者議会の先輩たちの提案で実施された事業の見学である。若者議会初日に全員が1人ずつ所信表明する場となる市議会の議場も案内された。その後も会議室でワークショップなどが行われ、全ての日程が終了したのは開始から6時間後の午後4時。若者たちは疲れた様子もなく、前向きな姿勢を崩さなかった。これから臨む若者議会への意欲を発散させ、互いに刺激し合っているようだった。

初顔合わせの準備会での自己紹介初顔合わせの準備会での自己紹介

本番前に市議会の本会議場を見学。初めてという人ばかり本番前に市議会の本会議場を見学。初めてという人ばかり

準備会のワークショップ準備会のワークショップ

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